イリアス終了 | 日本物怪観光のブログ

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毎年、夏のお化け物産展でお世話になっていた、東京谷中の雑貨店・イリアスが3月いっぱいで終了することになりました。

2001年に開店して22年間、物怪観光は翌2002年からお化け物産展を開催させていたので、実に21年のお付き合いになります。



[「お化け物産展」DM〜第十回・二十回]


それまで全生庵の幽霊画を観る以外、ほとんど行くことのなかった谷中。

そんな街の雑貨店を知るきっかけになったのは、大分県臼杵市の妖怪共存地区管理委員会(通称・臼杵ミワリークラブ)の本尊・齋藤さんからの情報でした。

齋藤さんは、物怪観光の妖怪郷土玩具蒐集を沼にまで引き摺り込んで下さった師匠のような方です。


彼は仕事などで上京された際は、東京にある老舗郷土玩具玩具店などを巡り、妖怪的な玩具類を見つけては、自分に教えて下さいました。

この時も、彼は妖怪物を探しに千駄木の老舗・伊勢辰さんに寄って買い物をしたそうですが、たまたまそのそばにあった雑貨店を見つけ、入ってみたそうです。

イリアスは世界各国の雑貨を集めた面白いお店ではありましたが、普通なら妖怪郷土玩具を求めている齋藤さんや自分が、ふらっと入ってみるようなお店ではありませんでした。


齋藤さんは偶然入ったこのお店で、まねき屋お〜のさんの作品を見つけます。

お〜のさんは、東海、関西の縁日を中心に活動する張り子玩具の作家さんです。

販売の拠点が縁日だけに、実店舗で、ましてや東京の雑貨店で扱われるようなことは、まずない作家さんです。

彼の作品には、干支などに混じって妖怪もたくさんありますが、イリアスに置いてあったそんな妖怪物を見つけた齋藤さんが、連絡を下さったのです。


[まねき屋お〜の「首振り オバケの蔵」イリアスホームページより]


連絡を戴いた翌日、早速イリアスを訪れたわけですが、なるほど、郷土玩具を探している人が入ることはなさそうなお店でした。

でも入ってみてびっくり、中には色とりどりの大野作品がずらりと並んでいました。

その中から怪しげなモチーフの張り子を選んでいたら、店主に声をかけられました。

前日の齋藤さん、そして自分と、普段お店に寄らなそうな男性客が立て続けに来店して、大野作品を、しかも怪しげなモチーフのものだけを買って行くことに違和感を感じたようです。

そこで、自分の素性を明かし、物怪観光の活動、制作についてお話ししました。

すると、しばらく興味深そうに自分の話を聞いていた店主の口から驚きの発言が。

谷中は夏に全生庵で幽霊画のご開帳をしているので、それに合わせてなんか展示・販売をしてくれないかと。

特にこれといった作品を見ていない、しかもそれまで絵画やイラストで妖怪は使ってはいたけど、雑貨などは作っていない、その日会ったばかりの人間に夏の展示を持ちかける。

正直驚きましたが、今のようにスマホもなく、情報もない当時、自分と作品のテーマをまるごと受け止めて下さったことがとても嬉しかったです。

[毎年夏に全生庵で行われている幽霊画展]



[展示の様子 2021年]


半年後、雑貨店での展示・販売を考えて生み出した手のひらサイズの妖怪玩具「豆化け」、昭和の駄玩具オマージュの「お化けカード」、そして全生庵の幽霊画をイメージした水に溶ける「お化け札」などを並べて第一回「お化け物産展」が開催されたのでした。


あれから21年、毎年新作を増やし、「豆化け」は20種類こえ、最初5種類からスタートした「お化けカード」は今では60種類をこえています。

[お化けカード]


[「豆化け」パッケージ]


[「豆化け」アマビエ]

[「豆化け」鵺]


お店を通じて知り合った作家さんとも交流が出来、物産展に合わせて妖怪物を作って下さるようにもなりました。張り子の大野さんも、毎年夏にお化けな作品を作って下さいます。

実家・岡山で坊さん玩具工房としても活動をしている兄も参加してくれていて、ここ数年は入り口付近を全てお化け物産で埋め尽くせるようになりました。




[お化けのおもちゃ「妖具(ヨグ)」]


[坊さん玩具工房の人形]

坊さん玩具工房



[近くの演芸場を使って寄席をやったりもしました。入場チケットはうちわでした。]



今でこそ、雑貨制作も活動の大きな一つですが、それまでギャラリー展示や書籍のイラストなどを中心に制作していた物怪観光が、こういった手に取りやすい作品を作るようになったのは「お化け物産展」がきっかけでした。



21年という長きにわたり物怪観光のやりたいように展示をさせて下さり、たくさんのお客さんや作家さんとの繋がりを持たせて下さいましたイリアスには、感謝しかございません。

3月31日まで残りわずかですが、あの空間を味わいに、伺いたいと思います。

古今東西雑貨店イリアス