文学通信さんから、今月末発売の式水下流さんの著書『特撮に見えたる妖怪』の見本誌が届きました。
妖怪を扱った特撮番組の変遷をたどり、そこに現れた妖怪たちについてまとめた、今までありそうでなかった1冊です。
こちらの本の表紙と裏表紙のイラストを描かせて戴きました。
この本はもともと式水さんが同人誌で出されていたもので、その時にも表紙イラストを描かせて戴きました。
今回も、タイトルがタイトル故、吉川観方の表紙のイメージで行くつもりでしたが、同人誌ではないので、特撮番組に登場する知る人ぞ知るキャラクターではなく、一般的によく知られている雪女でお願いしますと、著者の式水さんからリクエストがありました。
たしかに、雪女は特撮作品にもよく登場しています。そしてなぜか作品内では巨大化していることが多いので、吉川観方的な意匠でお墓をビルに見立てることにしました。
[雪女の巨大化については自著「空想妖怪解剖図」でも触れていました]
「絵画に見えたる妖怪」の装画では、滴る赤い血が印象的でしたので、その場所に雪女のスケール感を表す赤い車を描きました。因みに車種はトヨペットクラウン。初期ウルトラシリーズでは、よくパトカーとして登場した車です。ウルトラQのエピソードで未来から来たケムール人を追跡したのもクラウンのパトカーでした。
同人誌では、こうして吉川観方的な意匠をイメージして描いたイラストに、京極夏彦さんがこれまた吉川観方テイストなタイトル文字をつけて下さっていたので、当然「絵画に見えたる妖怪」オマージュな装丁になるだろうと思っていたら、仕上がってきたのは、まさかの佐藤有文。ジャガーバックス的な装丁でした。
吉川観方だの佐藤有文だの言っても、知らない人がほとんどだと思いますが、そんな人たちから見てもジャガーバックス風デザインはインパクトがあるのではないかと思います。
裏表紙のイラストも式水さんのリクエスト、こちらは化け猫にしています。
実写で登場した化け猫は多々ありますが、こちらは個人的に好きな大映の怪猫物「怪猫五十三次」風なイメージで描いています。
このように、この本の装丁は、カバーの隅々までこだわりのジャガーバックス感となっています。
そちらはぜひ実物をお手に取ってご覧下さい。
因みに京極さんが書かれたタイトル文字は本扉の方に。
京極さんは本書のおわりに「ないものを撮る」と題して寄稿もされています。
自分がそうであるように、妖怪好きには特撮好きが多く、特撮好きには妖怪好きが多いように思います。
両方ともの欲求を満たす、資料性にも優れた1冊。
発売は2月29日となっています。
ぜひお手元にどうぞ!!