≪2024年7月1日読了≫

先日この作家のシリーズ本の続きを読んだことで、この作家のノリを思い出した。世の中にユーモア系のミステリーを書く作家は多い。現代ではその代表格と言っていいのではないか。何と言ってもあのヒット作『謎解きはディナーのあとで』がある。「お嬢様の目は節穴ですか」という決めセリフが、帯に大きく描かれた装丁だった。帯の売上効果が顕著だった例だろう。書店では大いに目を引いたはずだ。あのヒットで、ユーモアミステリー作家の地位を固めた印象があるが、その他にも多くの作品を発表しているらしく、今回手に取ったのは、比較的最近のもの。やはりユーモアミステリーだ。

 

5編の短編が収録されている連作もので、『謎解きは~』よりもユーモア度が高めの印象だ。主人公が中学生であること、そして何よりもポプラ社の刊行ということで、やはり中学生くらいにとって読みやすい内容となっている。

母親が探偵事務所を経営する探偵という主人公の中学生。父親は、母親よりも能力的に足りないので、探偵社の探偵にすぎない。その中学生が、オカルトじみた謎を、ひょんな事で知り合った、自称天才発明家の女性に相談し、翌日その女性が、実験を伴う種明かしをすることで、トリックをあばくというのが基本展開だ。やはり、こういった連絡短編は、提携の型があったほうが読みやすいし、形式美を堪能することもできる。

 

オカルト現象を、学的証明をもって謎解きとする物語は、昨今よく目にするが、特にこの10年ほどは、理系関連のミステリーも増えてきていることもあり、その傾向が強い。オカルトという正体がわからないものへの恐怖と興味を、科学という公正な論理で詳らかにする行為は、やはり一種のカタルシスが存在するのだろう。

テーマとなるのは、幽霊の声、幽体離脱、瞬間移動など、オカルトものでは定番の現象ばかり。これらの現象を、オカルトではなく、科学的に検証することで、犯罪が露呈し解決となる。女性発明家は、実技をもって証明するのだが、そこに至る過程は、安楽椅子探偵ものに近い雰囲気があって楽しい。肝心のトリックについては、正直目新しいものはなく、凡庸な感は否めないが、読者層を、中学生くらいからと、低めのゾーンを考えている事を考慮すると、読みやすさ優先という事で納得した。キャラクター造形については、やはり『謎解きはディナーのあとで』系列のもので、ボケキャラがしっかりかまして、するどくツッコミを入れる主人公というリズム。プラス主人公の心語りで笑いを誘うくだりもお馴染みの手法だ。軽い読み物を欲している時に、何も考えず読むには向いているのかもしれない。さすがに、この類を続けて読もうとはならないが、このシリーズが続いていくのなら、刊行されれば、読むという感じでちょうどいいのかもしれない。

 

★★★★★☆☆☆☆☆