≪2024年5月19日読了≫

20年ほど前、古今東西の安楽椅子探偵ものを収集していた事があった。当然日本で出版されたものに限るが、古書店やネットを駆使し、当時の目録の作品はほとんど収集できた。ただ、坂口安吾の作品のみ、古書の価格が高額すぎて入手を諦めた事を覚えている。その後、安楽椅子探偵が主人公のテレビドラマがヒットした事などもあり、このジャンルが注目を集め、書き手も多くなったようで、その後の作品は追ってはいないものの、目に付いた作品は手に取っている。

 

本書は前作からの2作目だ。1作目は書店で見かけて手にとったのだが、驚いた事に作品の舞台となるバーは、現在私が済んでいる家から歩いて5分程度の距離であり、職場からはさらに近い。この地の大学出身の作家だという。作品中にもよく知っている町の地名や風景が登場することもあり、そういう意味でも楽しめるシリーズだ。

作品は4作の短編が収録されている。どれも前作同様、ウィスキーを題材とする安楽椅子探偵の謎解きもの。この種の王道である、バーのマスターが探偵役の設定。季節毎の4作品並べられていて、客が不思議に感じている謎を、何の気なしにマシターに語ると、「差し出がましいようですが、お手伝いしましょうか」と謎解きを披露るすのも前作同様である。

 

1作目。中学時代思いを寄せていた女性が、結婚しアメリカへ。時が経ち、その女性からの相談事がある。それは、死別した夫の趣味だった、価値のあるウィスキーを売り払いたいというもの。夫である男性がいかにウィスキー好きかを知っていたので、女性の手放し方に違和感を覚え、マスターに話を聞かせると・・・。

2作目。郵便受けに、包装されたウィスキーのミニボトルが入っていた。一体誰が入れたのか。どうやら近所の数件にも数日おきに同じウィスキーが送られていたようだ。犯人の目的も皆目わからず、不思議な話としてマスターに語ってみたのだが・・・。

3作目。牧師見習いの男が、恩師でもある牧師を殺し、雌らしいウィスキーを供えて自首した。殺された牧師も見習い牧師もウィスキーには興味がないという。それならなぜウィスキー、それもかなり珍しいウィスキーを備えたのか。マスターが謎を解く。

4作目。他に乗客のないローカル線の終電で、大きなバッグをもつ見知らぬ男が、話しかけてくる。勧められるままに、珍しいウィスキーを飲むが、一体この男の目的は何か。生体模型の会社社員というが、そういえばこの大きなバッグには一体ないが・・・。

 

正直言って、どれもエビデンス不足に思える。マスターがその結論に至った理由が弱すぎる。前作よりその弱さがひどくなっている気がする。マスターが勝手に想像で言ってるだけじゃん、って言われますよ。作品の設定や雰囲気が最高なのだが、そこが残念。

 

★★★★★☆☆☆☆☆