ヨコハマ買い出し紀行
ヨコハマ買い出し紀行 (アフタヌーンKC) 芦奈野ひとし
- ヨコハマ買い出し紀行 1 (1) (アフタヌーンKC)/芦奈野 ひとし
- ¥520
- Amazon.co.jp
[内容]
人口は激減し、物資も乏しく、海面上昇が続き徐々に人の生活圏が狭まっていく。文明の灯が消え、衰退していく世界。その世界には、人間と「ロボット」が生活している。ロボットは歳をとらないこと以外は、容姿も人と変わらず、特別な力があるわけでもない。ごく自然な形で人と「ロボット」が共存している。そんな近未来の日本が舞台。「ロボット」の一人であり、岬にある喫茶店「カフェ・アルファ」を営む主人公・アルファは、たまにコーヒー豆を”買出し”にスクーターを駆る。そんなアルファの日常を通して、終末期の風景を描く。
[感想]
ちょっと寂しいけれど、こんな終末があってもいい。
この作品の中の世界は、文明が衰退し、人々が終焉に向かって進んでいることを感じさせる。そう書いてしまうと、殺伐とし、荒廃した風景を想像されるかもしれない。しかし、本作ではそういった痛ましい雰囲気はなく、ただただ穏やかな日常が続く。作品には大きなストーリーは存在せず、おおよそ一話完結となっている。その各話では、アルファが目にする風景を通して、暖かさや寂しさを読者に感じさせる。
この作品の内容を説明するのは非常に難しい。話に大きな盛り上がりがあるわけでもない。時にキャラクターたちがその心情を語るシーンもあるが、全体として抽象的な描写が多く、とらえどころがない。ただそれこそが、この作品の魅力です。話を読ませるのでなく、雰囲気を読ませる。そんな作品。
さて登場人物ですが、まずは主人公の初瀬野アルファ(初瀬野は、アルファのオーナーの性)。彼女は感受性が強く、表情もコロコロと変わる。そんな彼女だからこと、日常の風景にも感動を感じさせてくれる。たんぱく質を分解できず、ミルクを飲むと次の日動けなくなってしまったり、お酒に酔うと踊りを踊ったり、屋外を徘徊したりする(本人は覚えていない)。特別な黒糖を食べて、そのうまさに涙を流すなど、笑いを誘う。
アルファと同じロボットで後継タイプのココネ。人間らしくしたいと思っていた彼女は、アルファに出会い、その自然な振る舞いを見て、自分も難しく考えすぎないようにしようとする。それ以来、ココネは「アルファ大好き」であり、その姿は、他の友人に軽い嫉妬すら感じさせる(笑)。
アルファの近所に住むタカヒロは、お姉さん的存在であるアルファにほのかな恋心を抱いている。
マッキは、そんなタカヒロに恋をしているため、アルファに嫉妬を抱くが、実際で出会ったことで、彼女自身もアルファの魅力に惹かれ、仲良くなっていく。
タカヒロも大人になっていくにつれ、仕事を見つけ、自分の歩む道を進んでいく。そんななかで、アルファへの憧れから巣立ち、マッキと結婚し、娘をもうける。
大人になっていったタカヒロとマッキ。そして、子供のころの2人にそっくりな娘サエッタ。自分は歳をとらないまま、そんな姿を見守るアルファは何を思うのだろう。
この作品は読む人によって評価がガラリと変わると思います。私自身、ここまで紹介してきても、その魅力をはっきりとした形ではとらえきれていません。
それでも、傍らに置いて、たまに読み返してみたい。そんな不思議な作品です。