2007-8-31

 暑い夏でした・・と言いたいところですが、相変わらず暑さが続いています。エアコン入れれば体がだるく、いれなければ眠られずという毎日にうんざりで す。おまけに、夕立というよりは、スコールと呼びたくなるような雷雨。ここは熱帯かいと笑いながら、もしかして・・・とほんの少し背筋の寒くなる今日この 頃・・・・

                                         中村智彦

全ての道は5Sに通ずる

 「5Sってなんですか?」 小声で学生くんが、聞きます。前の説明で話された言葉が分からなかったようです。整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の頭文字5つで、5S。製造業に限らず、事業現場での最も重要なことだとされています。   京都の機青連さんの恒例行事である会社訪問会に同行させていただいた時のことです。今回の会場は、工場を新築されたばかりの株式会社長濱製作所さん。 「3Sには終りがない」と断言される立入勘一社長のお話は示唆に富むものでした。生産活動を渓流の流れのように行い、「魅せる工場」を目指すと言います。 工場に顧客がやってくることで、任せても大丈夫だという印象を持たせること、それこそが最大の営業活動だといいます。

 別のある日、和歌 山にある川口水産株式会社のうなぎの蒲焼工場にお邪魔しました。国内産のうなぎは、籠に入れられたまま水で丁寧に臭みを抜くことから始まり、手さばきよく 職人さんで開かれていきます。その後は、自動化されたラインで、焼きとタレ付けが行われ、真空パックされていきます。裁かれてから、蒲焼になるまで実に 45分。清潔に管理された工場には、正直なところ驚きでした。
 川口泰史社長は、「食品製造に対して、消費者が大きな懸念を持っている時だけに、 清潔にし、外からの方にも見てもらえるようにするかが非常に大切」と言います。この工場が大きく替わったのは、ある大手コンビニ会社との取引開始だそうで す。取引を開始するに当って、コンビニ会社は徹底的な生産管理、衛生管理を求めてきました。「私たちの業界は、古い体質を持っている部分が多いのです。そ こに厳しい管理を求められたので、従業員の反発、私もなんどか切れそうになりながらやりました。」と笑います。しかし、結果的には、それらを乗り越えて、 取引をして良かったと言います。その後、偽装や不祥事の連続は、食品産業全体を揺るがし、旧態依然とした生産管理や経営方針は、消費者の不信感を生むこと となった。流通業者は、消費者の厳しい要求に応えようと、製造企業への監査の強化や、選別を始めたのだ。「あの時がなければ、今、うちの会社は無かったか もしれない。」

 金属加工などの製造業と、食品加工などの製造業を一緒に語るのは乱暴のそしりを受けかねないが、5Sの重要性を多くの経 営者が再認識していることには違いは無い。ある意味、全ての製造業の現場で共通してきたのは、「職人の世界であり、他人に見せるものではない」という意識 だったとは言えないだろうか。それは職人としての誇りであり、現場=我が世界という意識の表れだったかも知れない。しかし、一方では、革新や、生産管理を 拒み、時として不正や偽装などの温床となりかねなかった。

 海外製品の品質への不信感は、そのまま国内製品への大きな期待として跳ね返 る。期待は、時として疑いとなり、消費者は裏切られた時に大きな失望と不信を募らせる。そのことを理解できた経営者と、旧態依然として漫然と続けてきた経 営者との間に、今、大きな格差が生まれつつあることは、未だに続く食品の偽装事件を見ても理解できるだろう。
 さまざまな経営方法や経営管理手法 が、出ては消え、また出てとしていく中で、5Sに関しては変わらずに、派手さはないものの継続している。むしろ、今ほどその重要性を主張すべき時代なのか もしれない。5Sは、単に工場内の整理整頓などができていればいいというものではない。自分の職場を、自分で誇りに思い、愛着心を持っているかという点も 重要である。契約社員や派遣社員を大量に採用し、低コストで事業を行っている現場では、いくら5Sだ、3Sだと叫んでみても、仮に表面的なことは実現でき ても、それは単に整理され、整頓されているだけに過ぎない。今回、お話を伺った立入社長も、川口社長も、そうした表面的なものを追及しているのではなかっ た。5Sによって、見えないものが見え、職場への愛着が湧き、そしてそこに新しい付加価値が見出されることが、企業にとっての強みになる、それこそが、 5Sの目標である。

 いまどき何を言っているのかと笑う経営者もいるだろうが、今回、工場を拝見したこれら二つの企業の経営者は、自社工 場の5Sはまだまだ不充分であると言う。「うちの業界では進んでいる、というのでは、だめなのです」という同じ意見を耳にした。厳しい国際競争の中で、国 内での生産拠点として生き残るためには、新たな付加価値を絶えず追求していかねばならない。そんな中で、5Sはまだまだ強力な武器になるはずだ。二人の経 営者はそう語っているように感じた。