2005-12-30
12月は、北海道から四国までを走り回りました。山形には、二週連続して行きました。特急の脱線事故には、本当に驚きました。つい二週間ほど前に、時間 帯は少し違えても、同じ特急に乗ってきたからです。今回の事故と言い、今年は鉄道事故の多い一年でした。よく利用する立場から、鉄道会社にお願いしたいの は、5分、10分の短縮を乗客はもう望んでいないということです。利用客が、「本当に大丈夫なのかな」と思うような「時間短縮によるサービス向上」は、も う「サービス向上」ではないのです。
~2006年を占う~
2006年は、どんな一年になるでしょうか。ま、そんなことが分かるようなら、けちな大学教員なんかやっていないで、とうの昔にヒルズ族に転進しているはずです(笑)ですから、まあ、一年後に責任を問い詰めるようなことなく、与太話だと思って読んでください。 * * * * * *
昨年から、新卒の採用は増加してきています。大手企業の人事担当者に話を聞いても、数十年ぶりに独身寮の新設話など、活気のある動きが感じられます。こう した動きは、恐らく今年になって本格化するでしょう。これは景気の動向とは、少し違った次元で継続するでしょう。つまり、2007年問題と言われる団塊の 世代が大量に定年退職を迎えるために、その補充を各企業で本格化させているからです。特に現場要員に関しては、技術などの伝承に時間が必要なので、前倒し で採用が増加しているようです。エネルギー関連企業などで聞いた話では、高校卒業者の確保がすでに課題に挙がっており、地方に採用担当者を派遣するなどし て、採用体制を強化している企業も出てきているようです。
製造業全体ではどうでしょうか。自動車産業の好調に、国内の製造業全体の景況 が牽引されてきた感のある2005年です。2006年も、自動車メーカー各社は強気の見込みでいるようです。メーカーの生産ラインでも人手不足感があり、 季節工や期間工からの正社員採用も増加しているようです。しかし、こうした活況の一方で、下請け企業の経営者の表情はあまりさえません。「確かに少し前か ら比べると忙しいし、経営も安定してきているが・・」という感想が多いようです。恐らく、そうした「どことはない不安感」は2006年も継続するでしょ う。 その「どことはない不安感」は、人口減少などによる国内市場の縮小にあることは間違いないでしょう。若年層の減少は、大学の経営危機などという形で みなさんの目に触れることが多いのですが、それは今後、たとえば大学卒業、高校卒業後、就職して消費を牽引する若年消費者層の減少にも繋がる問題なので す。「大学もたいへんだねえ」という感想が、そのまま多くの業種に共通してくるのです。国内市場の縮小は、つまり海外市場の開拓の必要性と繋がります。 従って、多くの日本の大手製造業企業は、海外市場の開拓に従来にも増して注力しています。
「最近、受注する工場設備の7割以上は海外工 場向けだ」という工場設備メーカーの経営者の言葉は、これを裏付けています。国内の市場は縮小する。それは人口動向から見てほぼ間違いないでしょう。さら に、若年層の減少で働き手の確保も難しくなるだろうと予測されています。ならば、海外工場を拡充するというのが、大企業にとって普通の選択肢であると言え ます。家電製品のほとんどがいまや、海外生産品になっています。1980年代に東南アジア製の家電製品というと、よく故障するし、「安かろう悪かろう」の 代表のように思われていましたが、今、マレーシア製だの、タイ製だの、中国製だのと気にする人はほとんどいないでしょう。同様に考えれば、自動車も、なぜ 人件費の高い日本で生産が続くと信じられるのでしょうか。
こうした状況の変化の中で、日本の製造業が生き残る道として想定されている一 つが、工作機械や生産用ロボットです。工作機械は、バブル景気崩壊後、長らく不況が続いてきました。しかし、ここへ来て急に業況が回復しています。その理 由は、海外への輸出の増加です。それも、日本の自動車関連産業の海外工場向けが主力となっています。日系だけではなく、海外の製造企業からの発注も堅調な 伸びを示しています。工作機械の分野で、世界のシェアを競っているのは、日本、ドイツ、フランスなど先進国ばかりです。マザー・マシンと呼ばれる「機械を 作る機械」の精度は、作り出される機械よりも、数段、精度が要求されるだけではなく、高度な技術水準が要求されます。この分野では、まだ日本は高い競争力 を持っているのです。政府の産業政策の中でも、ロボット産業は重点課題に挙がっています。2006年は、一層、こうした工作機械やロボット産業の重要性が 認知されることでしょう。
最後に、書いたり話したりすると反響がある商工団体のことですが、恐らく、2005年に続いて、その存続や必 要性についての議論が続くでしょう。特に、地方自治体の財政難が、地方部でそろそろ限界に近づきつつあり、それに伴って当然ながら、商工団体の存続や統合 が話題に上るでしょう。各商工団体が生き残りをかけて、戦略を練るでしょう。仮に、団塊の世代にイニシアチブを握られ、「放っておいて、定年退職者の不補 充を行えば、定員も減らせるし」と何も手を打たない方法を採るような団体があれば、恐らく生き残りは無理でしょう。50歳以下の若手職員や、団体の青年部 が、どれだけ真剣に自分達の将来を考えて、戦略を練り、行動に移せるかどうか、恐らく、この2006年は大きな転換期となるでしょう。
なにか大きな事件や事故が発生しない限り、2006年も安定の中で、将来の不安を抱えていくという一年になるのではないかと思います。しかし、不安を抱え た安定に止まっていれば、その不安が現実のものになることは確かのようです。2006年は戌年。まさにドッグイヤーです。どれくらいその速さに追いつける かどうかが、2006年をどう過ごすかの鍵でしょう。
今月号は、中村主任研究員が担当しました。
12月は、北海道から四国までを走り回りました。山形には、二週連続して行きました。特急の脱線事故には、本当に驚きました。つい二週間ほど前に、時間 帯は少し違えても、同じ特急に乗ってきたからです。今回の事故と言い、今年は鉄道事故の多い一年でした。よく利用する立場から、鉄道会社にお願いしたいの は、5分、10分の短縮を乗客はもう望んでいないということです。利用客が、「本当に大丈夫なのかな」と思うような「時間短縮によるサービス向上」は、も う「サービス向上」ではないのです。
~2006年を占う~
2006年は、どんな一年になるでしょうか。ま、そんなことが分かるようなら、けちな大学教員なんかやっていないで、とうの昔にヒルズ族に転進しているはずです(笑)ですから、まあ、一年後に責任を問い詰めるようなことなく、与太話だと思って読んでください。 * * * * * *
昨年から、新卒の採用は増加してきています。大手企業の人事担当者に話を聞いても、数十年ぶりに独身寮の新設話など、活気のある動きが感じられます。こう した動きは、恐らく今年になって本格化するでしょう。これは景気の動向とは、少し違った次元で継続するでしょう。つまり、2007年問題と言われる団塊の 世代が大量に定年退職を迎えるために、その補充を各企業で本格化させているからです。特に現場要員に関しては、技術などの伝承に時間が必要なので、前倒し で採用が増加しているようです。エネルギー関連企業などで聞いた話では、高校卒業者の確保がすでに課題に挙がっており、地方に採用担当者を派遣するなどし て、採用体制を強化している企業も出てきているようです。
製造業全体ではどうでしょうか。自動車産業の好調に、国内の製造業全体の景況 が牽引されてきた感のある2005年です。2006年も、自動車メーカー各社は強気の見込みでいるようです。メーカーの生産ラインでも人手不足感があり、 季節工や期間工からの正社員採用も増加しているようです。しかし、こうした活況の一方で、下請け企業の経営者の表情はあまりさえません。「確かに少し前か ら比べると忙しいし、経営も安定してきているが・・」という感想が多いようです。恐らく、そうした「どことはない不安感」は2006年も継続するでしょ う。 その「どことはない不安感」は、人口減少などによる国内市場の縮小にあることは間違いないでしょう。若年層の減少は、大学の経営危機などという形で みなさんの目に触れることが多いのですが、それは今後、たとえば大学卒業、高校卒業後、就職して消費を牽引する若年消費者層の減少にも繋がる問題なので す。「大学もたいへんだねえ」という感想が、そのまま多くの業種に共通してくるのです。国内市場の縮小は、つまり海外市場の開拓の必要性と繋がります。 従って、多くの日本の大手製造業企業は、海外市場の開拓に従来にも増して注力しています。
「最近、受注する工場設備の7割以上は海外工 場向けだ」という工場設備メーカーの経営者の言葉は、これを裏付けています。国内の市場は縮小する。それは人口動向から見てほぼ間違いないでしょう。さら に、若年層の減少で働き手の確保も難しくなるだろうと予測されています。ならば、海外工場を拡充するというのが、大企業にとって普通の選択肢であると言え ます。家電製品のほとんどがいまや、海外生産品になっています。1980年代に東南アジア製の家電製品というと、よく故障するし、「安かろう悪かろう」の 代表のように思われていましたが、今、マレーシア製だの、タイ製だの、中国製だのと気にする人はほとんどいないでしょう。同様に考えれば、自動車も、なぜ 人件費の高い日本で生産が続くと信じられるのでしょうか。
こうした状況の変化の中で、日本の製造業が生き残る道として想定されている一 つが、工作機械や生産用ロボットです。工作機械は、バブル景気崩壊後、長らく不況が続いてきました。しかし、ここへ来て急に業況が回復しています。その理 由は、海外への輸出の増加です。それも、日本の自動車関連産業の海外工場向けが主力となっています。日系だけではなく、海外の製造企業からの発注も堅調な 伸びを示しています。工作機械の分野で、世界のシェアを競っているのは、日本、ドイツ、フランスなど先進国ばかりです。マザー・マシンと呼ばれる「機械を 作る機械」の精度は、作り出される機械よりも、数段、精度が要求されるだけではなく、高度な技術水準が要求されます。この分野では、まだ日本は高い競争力 を持っているのです。政府の産業政策の中でも、ロボット産業は重点課題に挙がっています。2006年は、一層、こうした工作機械やロボット産業の重要性が 認知されることでしょう。
最後に、書いたり話したりすると反響がある商工団体のことですが、恐らく、2005年に続いて、その存続や必 要性についての議論が続くでしょう。特に、地方自治体の財政難が、地方部でそろそろ限界に近づきつつあり、それに伴って当然ながら、商工団体の存続や統合 が話題に上るでしょう。各商工団体が生き残りをかけて、戦略を練るでしょう。仮に、団塊の世代にイニシアチブを握られ、「放っておいて、定年退職者の不補 充を行えば、定員も減らせるし」と何も手を打たない方法を採るような団体があれば、恐らく生き残りは無理でしょう。50歳以下の若手職員や、団体の青年部 が、どれだけ真剣に自分達の将来を考えて、戦略を練り、行動に移せるかどうか、恐らく、この2006年は大きな転換期となるでしょう。
なにか大きな事件や事故が発生しない限り、2006年も安定の中で、将来の不安を抱えていくという一年になるのではないかと思います。しかし、不安を抱え た安定に止まっていれば、その不安が現実のものになることは確かのようです。2006年は戌年。まさにドッグイヤーです。どれくらいその速さに追いつける かどうかが、2006年をどう過ごすかの鍵でしょう。
今月号は、中村主任研究員が担当しました。