2005-3-31

 原材料費の高騰が止まらないようです。先日もある中堅化学製品メーカーの方とお話をしたのですが、一部の原材料では昨年の7倍から8倍の価格。価格上昇 だけではなく、品薄状況で、頭を抱えているとおしゃっていました。石化製品だけではなく、金属材料の値上げも深刻で、これ以上の逆ザヤが続けば、廃業や倒 産を引き起こすレベルだと、ある経営者も指摘していました。円高の恩恵を被っていても、これだけ上がっている価格。投機筋なのか、それともいよいよインフ レが始まるのか。ライブドアだ、フジだと騒いでいていいんでしょうかねえ。 

若手従業員の定着率向上・・・?

 「若手従業員の定着率の向上」という話題で、友人と盛り上がりました。友人からの質問は、「若手従業員の定着率の向上」を取り組んでいる中小企業や業界はないかというものだったのです。
 で、考えてみると、「定着率が悪い」=「定着率を向上させなきゃならない」=待遇の悪い会社なんじゃないかと、そもそも設問が失敗ではないかとなったのです。
  確かにマスコミの報道などを見ていると、大学や高校を卒業後、数ヶ月で辞めてしまう「ミスマッチ」問題が大きく取り上げられています。フリーターや NEET(定職に就かず、さりとて学校に行っている訳でもなく、なんらかの訓練を受けているわけでもない人)の増加が、さまざまなところで取り上げられて います。
 しかし、企業側で、「辞めたい」といっている者に、「それじゃだめでしょう。」、「もう少し頑張ってみたら」と口でいうのはともかく、なんらかの取り組みをする必要があるのだろうかなあと議論になったのです。

 現在の企業を思いっきり独断と偏見で分類すると次のようになるんじゃないだろうかと、書き出してみました。

1. 大量採用→大量退社型・・「毎年、数百人単位で新卒を採用」しているのに、いつまでたっても中小企業のままという会社がありますよね。つまり、まあ、かな りヤバイ部類の企業だと言っていいでしょう。こういう会社は、大量に辞めていく=人材は使い捨てという考えですから、引き留め策なんて、もともとない。

2.居心地の悪く低定着率型・・これは、単に給与が悪いとか、待遇の問題で、引き留め策うんぬんの前に待遇改善が前提ですから、これも論外。

3.居心地良くて高定着率型・・これは、なかなか辞めてくれないですから、長
期的にみれば人件費が上がって困っているという話になってしまいます。

4.人材流動型・・これは、単一の企業ではなくて、業界全体で転職がタブーではない業界であることが前提。IT業界やベンチャービジネス系、あるいはホテル関係なんかもそうだといいます。

  さて、こうやって分けてみると、「引き留め策」が必要になってくると考えられるのは、4のパターンです。4のパターンの「引き留め策」の代表は何か。業績 にあわせた年俸制とか、ストックオプションなどが考えれます。簡単に言えば、スポーツの世界と同じようなことになるわけです。
 「ん?」友人と議 論していて、話がずれてきたのに気が付いたのです。つまり、企業が講ずるのは、「他社に引き抜かれたり、転職されたら困る優秀な人材」の引き留め策で、 「何をやったらいいか分かりません」というフリーターやNEET予備軍の人材に対するものではないのです。
 「しかしね、最近、今まではどちらかというと人材使い捨てという風潮だった大手飲食チェーンなどでも、人材育成と言い出しているようだし、どうも様子が変ってきているようだよ。」
 友人はそういうのです。確かに、日本の労働人口が今後、減少するとされていますが、果たして、すでにそういう影響がでているのでしょうか。

  「人材が二極化している」と別の友人は指摘します。フリーターやNEETという層が定着するにしたがって、30歳代以上でもなんら職務経験や資格などいわ ゆるキャリアが形成されていない層が生まれているというのです。こうした層は、いわば新たな貧困層を形成しつつあるといえます。一方で、複雑化する社会の 中で、それに対応する人材を企業は欲しています。こちらの層は、次第に流動化する雇用の中で、ヘッドハンティングや転職が普通になり、企業側も定着しても らうために良い待遇を提示していきます。
 「問題は、あえて将来性もなく、キャリア形成にも繋がらない、低賃金労働に自分から望んで就こうとする 若者が増えていることじゃないですか」と、人材派遣業にいる友人は指摘します。この若い友人は、自分から望んでそういう仕事に就こうとするのだから、周り が何を言っても仕方ないでしょうと、切って捨てます。「つまり、マスコミや政府が問題だと騒ぐのは、彼らの人生設計を心配してではなく、低所得者層が増加 して、税収が減り、社会保障費が将来的に増加することを心配してのことでしょう。」

 そんな話をしている時に、大学時代の友人と電話で話 しをする機会がありました。いろいろ事情があって十年近く勤めた流通系企業を退職し、二年間くらいのブランクがあったのですが、再度、就職活動をしたので す。女性で40歳近いということで、本人も相当、厳しいことを覚悟したらしいのですが、アルバイトということで面接に行った企業で、正社員にならないかと 言われたそうです。人事担当者は、「人は沢山いるが、使える人材が少ない」と言っていたそうです。

 「なるほど、そうか。企業側からすれ ば、単に定着率をあげても、いらない人材を抱え込むだけだから、それよりも即戦力として使える中途採用で補充しようという考えになるわけだ。」機械化、マ ニュアル化を進めることによって、キャリアや経験をあまり必要としない労働者層が大量に増加しています。一方で、こうした機械化やマニュアル化を進める高 度な技能や知識を求められる労働者層も生まれてきている。前者は、非正規従業員で充分。しかし、後者は企業存続のために必要だから、定着率を上げるつま り、待遇面で考慮する。やはり、二極分化が起こっているのは確かなようです。

 「若者が働く意味を理解して、簡単に定職を捨てないようになんていうのは、大学とか、厚生労働省なんかがやることで、企業はそこまでできないですよ。」人材派遣業の友人は、そう言う。確かにそうだ。

  ただ、それでも腑に落ちないのは、敢えて条件が悪く、将来性もないような仕事を選んでいく若者の多さでしょう。貧困から抜け出したい、そう思ってみんな努 力してきたはずなのですが。同じ話を苦労して叩き上げてきた高齢の社長としました。彼は、こう言ったのです。「別に貧乏でもいいですって言うだろう。貧乏 を知らないからだ。どんなものだかを。」


 今月号は、中村主任研究員が担当しました。 

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