大きいからすごいかと思っていたのですが、そう大事にもならず、台風も過ぎて、いよいよ夏も本格化(笑)。東南アジアばかり行っているから、暑いのが得意と思われがちですが、暑いのはあまり得意では・・・。いや、寒いのも嫌いですが・・・。
 暑い中、7月の前半は山形、後半は広島、佐賀、米子、松江。8月後半は、宮崎、長崎と回ります。読者のみなさんで、この地域の方がいらして、「うちにもおもしろい取り組みや企業があるよ」、「ここは見ておいた方がいいよ」という情報がありましたら、ぜひ教えてください。

 中小企業支援策って・・?
 なんだかマスコミが騒ぐほどに盛り上がりを感じない参議院選挙。年金制度にかき消されたのか、はたまたこのところの景気上昇ムードのせいか、ぱったりと中小企業支援、起業の促進などという言葉が聞こえてこないのは、気のせいだろうか。

  あるところから原稿の依頼が来た。資料も添えられていて、それを参考にと書かれていた。正直、言って、どうして自分のところに来るかなあと不思議に思いな がら、断れない性分なので、とりあえず受けてしまう。それでも、私としては珍しく、電話で編集と打ち合わせした時に条件を二つ出した。一つは、用語でこち らの用語で通すこと。(これはまあ、分かる人にしか分からないだろうが、ある人たちは、特定の用語を使う。でも、自分は違うから。)それから、もう一つ は、資料として送られてきたものに書かれている主張とは、考え方は違うことを書くという点。

 送られてきた資料は、自分とご同業の人に よって書かれていたのだが、どうも考え方が違う。なにより、一番、ひっかかったのは、「中小企業への支援策の拡充を要求しよう」という文章が、繰り返し出 てくることだった。その内容は、低利融資、それも無担保無保証の拡充を行政に訴えていくべきということのようだ。

 よく考えてみれば、低 利で無担保無保証の融資が欲しいのは、別に中小企業経営者だけではない。私たちのようなサラリーマンだって、そんなのがあれば、嬉しい。だから、中小企業 経営者のみならず、政府にその制度の拡充を要請しようと言えば、多くの人たちの賛意を得られる、かも、知れない。
 しかし、親しくしている中小企 業経営者に、聞くと、たいていにやにや笑って、「そりゃあれば良いけど、そんなことをしたら、貸し倒れが続出するよ」と言うのだ。別の経営者に至っては、 「そもそも事業を始める資金もないのに、金借りて事業を始めたいとか、担保も保証もないけど、金貸してくれなんて、単なる無責任じゃないのかね」と切って 捨てる。
 もちろん、「中小企業の経営者は、あんたの廻りにいるような強い人ばかりじゃないよ」と批判を受けるかも知れない。たぶん、それは正し いのだろう。しかし、もう一つ考えねばならないのは、実はすでに自治体の商工振興費と銘打たれ予算の中で、その大半が低利融資に投入されているという事実 である。嘘だと思えば、一度、お住いの自治体の予算を調べてみればすぐ理解できることだ。これ以上、低利融資に予算を割くと言うことは、他の事業費を削減 しなければならない。それに、貸し倒れの金額も相当だ。金融機関への批判もせねばならないが、経営者の責任もまた問われなければならない。

  それだけではない、現状でも我が国の中小企業への低利融資など金融関係の支援制度は、先進諸国を比較しても、相当充実しているのだ。昨年、政府が進める無 担保無保証の融資制度について、いくつかの政府系金融機関や民間金融機関の関係者と話しをする機会を持った。個別に話を聞くと、みな口を揃えて、反対の意 見を述べた。話は簡単で、「補助金ではなく、融資という以上、返済されるのが条件」であり、返済される見込みが極めて薄いところに税金を投入する意味があ るのかとの指摘だった。
 ある関係者は、「もし、なんら保証も担保もなく、資金を提供するということになれば、それは融資ではなく、投資ということになる。どこからも金を借りられず、誰も保証もしてくれず、投資も集められない経営者に、金を貸すなんてことがありえるだろうか」と言う。

  ある中小企業経営者は、問題は融資制度にあるのではなく、一度、起業したら失敗は絶対に許されない、そして、一度、失敗したら二度と許して貰えないという 日本の風土が、大きな問題だと言う。経営者は、一度、倒産させてしまえば、もう全てが終わりになってしまうので、ダメと分かっても金策に走り回り、傷口を 広げ、再起の可能性を自ら絶ってしまう。無担保無保証の融資制度を拡充すると、一層、そういうことを助長するのではないかと、その経営者は懸念する。
  「借りた金は、利子をつけてきちんと返す。それが、最低限の経営者としてのお約束でしょう。それがなくなったら、いわゆるモラルハザードです。結局、どの 政党も票が欲しいがために、そんなことは目をつぶって、中小企業支援と言っているのでしょう。最後になって回収率が悪いの、なぜ貸し付けただのと批判さ れ、振り回されるのは、我々なのに」と、ある政府系金融機関の職員は嘆いていた。

 日本の中小企業を振興していくこと、製造業を延ばして いくことは、非常に重要な課題であるし、そこに税金が投入されることには反対しない。しかし、なんとかの一つ覚えのように「低利融資の拡充」を要求するこ とが、本当に中小企業の活性化に役立つのだろうか。中小企業の経営者にとって、求められているのは、「要求」ばかりすることではなく、自社の資金繰り、取 り巻く金融制度などを勉強し直し、議論に積極的に参加することだろうと思うのだが。


今月号は、中村主任研究員が担当しました。