年度末。年度末。今年は、例年になく、追いつめられた年度末でした。ごめんなさい、編集長・・・・・
 しかし、今年は周囲で、新しい出発をされた方が多くいらっしゃいました。決して若い方ではなくとも、新しいことに挑戦されていく。そんな姿を身近に見ると、反省することが多いです。


 新産業創出というが・・・
 いろいろな方たちの意見を聞くと参考になることも多いし、そうかなあと疑問に思うことも多い。
 最近、疑問に思ったのは、複数の「学識経験者」から聞いた意見だ。つまり、彼は次のようなことを主張するのだ。

「今の中小製造企業は、厳しい国際競争の下で生き残れなくなっている。つまり、時代遅れになっているのだから、あえて延命させることはない。」

 確かに、まあ、これは一理あるでしょう。

「今の時代、ITが進んでいる時代です。地域が物理的に離れていても、問題はない。だから、製造業は人件費の安いところに移動するのは当然のことで、それを止めることは国際協力上も、問題だ。」

 まあねえ、それはそうかも知れませんねえ。

「だから、都市には都市の新産業を創出すべきです。IT関係やソフト関係、クリエイティブな仕事やアートな仕事といったものを、我が街に誘導し、集積させることで新しい産業が生み出されるのです。」

 ま、このあたりから、どうもいちゃもんをつけたくなるのです。果たして、製造業が無くなってしまった街に、クリエイティブでアーティスティックな仕事がやってくるのだろうか。
  新大阪駅周辺。ワンルームマンションが立ち並ぶ一角がある。はっきり言って、あまり柄の良いとは言い難い地域だ。ワンルームマンションには、暴力団の事務 所や、怪しげな「会社」の事務所などが入っている。そんな中に、マンションメーカーと呼ばれる、特に服飾系のデザイナー、クリエーターの自宅兼工房があっ たり、ベンチャービジネスを目指す人たちの自宅兼オフィスがある。
 彼らが、そうしたところを選ぶのは、もちろん、賃貸料が大阪中心部よりも安いと言うこともあるし、新幹線の駅や伊丹の空港に近いという利便性もあるのは当然だ。
  しかし、何人かのそうした経営者たちに話を聞くと、大阪市内や東大阪といった製造企業、それも中小企業が集積しているのが魅力だと言うのだ。つまり、自分 たちのアイデアを紙に落とし込み、それと幾ばくかの現金を持って、中小企業周りをすると、だんだん具体化し、製品ができあがっていくからだという。
  同じような話を東京都墨田区でも聞いた。アパレルメーカーとして業績を拡大するある企業の若い責任者は、「うちは中国なんかに行くつもり、生産するつもり ありません。」と笑いながら強調した。「ここはいいんですよ。最初は渋谷か新宿に事務所と言っていたんですが、やっぱりここなんです。企画を作って、思い 立ったら、自転車でぐるっと回ると、製品になっていく。たとえ、回ったところで出来なくても、どこにいけばいいかの情報が絶対手に入る。」

  某地方自治体の役人をやっていたとき、あるご高齢の経営者に苦言を頂いた。「どうして中小企業のための技術研究所をあんな辺鄙な郊外に移転したのかね。昔 は、町工場が沢山あるすぐそばにあった。いや、研究所だけじゃないくて大学も市内にね。そのころは、別に用がなくても、研究所の職員や大学の先生たちが、 工場に顔を出して、お茶飲んでいた。こっちも、納品や営業のついでにお菓子の一つももって、研究所に立ち寄った。そこで、いろいろなアイデアや発明や企画 が生まれてきたんだ。なんでそういうのが分からないかねえ。」

 新産業の創出も重要な課題だろう。アイデアや企画やデザインを、形にする 機能が失われてしまった都市に、創造的な仕事をする人たちが「誘導」などされるのだろうか。都市は、「クリエイティブな人たちが集えばいい」と言うが、妄 想癖の人たちばかりを集めても仕方ないのではないか。「ものづくりは、人件費の安い海外でやればいい」という意見は、やはり30年以上前の「純化」政策に 知らない間に毒された脳みそから出てくる意見だと思う。

 街の中に、いろいろなものが混ざり合っていてこそ、そこから新しいものが発生し、創造されてくるもののはずなのだが。 
 
今月号は、中村主任研究員が担当しました。