製造業の支援策として、ものづくり技術・技能の継承ということがよく言われる。小生もこれに関わるお手伝いをいくつかしてきた。しかしいつも疑問に思っ
てきたことは、単に若い人(あるいは子供)につくる技術・技能の重要性を啓蒙するだけでいいのか、ということである。ものづくりに関心を持つ人が増え、進
路として工場に目が向けば、それはそれでいいのだが、それが製造業の活性化につながるのか、あるいは起業・創業につながるのかな、と考えてしまう。
異論があるかもしれないが、小生は今後の日本のものづくりの基本は「意欲」と「自律心」と「創造力」にあると考えている。これに対応した熟練のあり方は 「慣れること」と「向上すること」と「飛躍すること」であると思う。作業に慣れていくには意欲がなければならない。作業の技能が向上していくには自律心が 重要だ。そして技能を従来の延長線上ではない全く別の次元までもっていくには創造力が不可欠である。
一見すると、下請的なものづくりに携わる人達は、取引先や親企業から言われるままに生産活動を行っていて、そこには創造力発揮の余地がないように見える。 しかし生産現場には程度の差こそあれ自律的な創意工夫が必ずあるはずである。そうでなければ作業や事業を長期的に継続できない。彼らがつくるものは親企業 や取引先などから設計図などで指定されているものかもしれないが、彼らは何か絶えず自己の課題をもってものづくりに対峙しているような気がする。とりわけ 熟練工と呼ばれる人達を見ていると、同じものをつくっていてもつくり方に創造力が込められているように思う。
2002年度、川崎市のか わさきマイスターに選ばれた木型工の前原さん(65歳)は15歳からで訓練校のようなところで3年間木工を習得した後、電話交換機の木製キャビネットなど をつくる工場で働いていた。しかし「同じもばかりをつくっていてはオリジナリティーが出せない」ので3年で辞めて大手重電メーカに転職する。ここで大型 モータの木型などつくる。木型は、木目に注意して狂いが出ても差し支えないつくり方をするのがコツだそうだ。得意先の(鋳物用)砂の性質に応じてつくるの も大事。手鉋などは自分で工夫してつくると言う。そこに7年勤めた後、大手自動車メーカに転職する。普通だとここに安住するのだが、彼は外人技術者に命令 されたとおりにつくるだけの作業に飽きたらず、ほどなく系列の木型屋に転職。そこで師匠となるべき工場長と出会い彼の独立とともにその会社に移り、経営も 勉強する。ここに3年近く勤めてから自宅で創業することとなる。
創業してからも別の木型屋の下に入って下請仕事をすることをよしとせず に全て鋳物メーカーからの直で受けるべく努力する。そのためにもつくり方のオリジナリティーにこだわってきた。途中、木型から発泡スチロール型へ転換す る。発泡スチロール型のつくり方は木型の応用だが、木よりもオリジナリティーのあるつくり方が出来ると言う。大きな型を組み合わせをよく考えて張り合わせ てつくる。この組み合わせの発想がポイントのようだ。最終的には同じ形になる型でも、どう組み合わせてつくるかで納期、鋳物の「抜け」の良さ、精度などが 変わってくると言う。ここにものづくりの創造性が見られる。
下請的な委託加工が専門のめっき業においても創造力を発揮している職人がい る。工業用クロムめっきでトップクラスのある中小企業にこの道48年のめっき工がいる。彼は複雑な形状をした部品の一部にピンポイントで所定の厚さの硬質 クロムめっきをすることを得意としている。通常、30ミクロンの精度というとこれにプラス30ミクロンでめっきをつけ、研削・研磨工程で残り30ミクロン を削って精度を出すものだが、これを彼はめっき工程だけで出すのである。航空機のエジェクションボディの内径の摩耗したところの修理めっきの写真を見せて 貰ったが、円筒の内側の一部にめっきを施している。こうすると新品より丈夫になるという。
このようなことが出来るためには、めっき液の 濃度の安定性や液の調合の工夫、電流のコントロールなどが重要なのだが、もう一つ彼でなければのものがある。めっき治具の工夫である。いわゆる「引っ掛 け」をさらに複雑な治具化して電流のプラスとマイナスの流れをコントロールし、液の接触をコントロールして必要な箇所にめっきをつけるのである。見せて頂 いた様々な治具はまさに発明品のようであった。治具の材料は鉄、銅および樹脂で日曜大工用品店などで購入できるようなものであるが、ここにめっきのノウハ ウを集約させてつくる。めっき液の中の状況を読むことが出来るような能力と発明家的なセンスがなければ簡単にはつくれない代物だ。
いず れの事例もいわゆる製品革新ではなく工程革新である。彼らを見ていると、仕事に熱中し、熟練度を向上させたその果てに、「思いつき」や「面白さ」を大事に して、原点に戻って発想の転換をしているような気がする。その意味では製品開発と同じような創造力が工程革新にも要求されると言えよう。
所定の設備機械を使って精度を向上させるための基本は「10年1ミリ」という漸進的革新の努力であろう。しかしこれを「5年1ミリ」にするには方法や手順 を変えたりバイトや治具を工夫するなどの発想の転換が必要となるのではないか。ものをつくる作業における革新にも創造力を発揮する余地は十分にあると思 う。人間のやりがいは創造性の発揮にあると考えるならば、ものづくりが本質的に内包する創造性をもっとアピールしていくことが、この世界を振興することに つながるのではないだろうか。
異論があるかもしれないが、小生は今後の日本のものづくりの基本は「意欲」と「自律心」と「創造力」にあると考えている。これに対応した熟練のあり方は 「慣れること」と「向上すること」と「飛躍すること」であると思う。作業に慣れていくには意欲がなければならない。作業の技能が向上していくには自律心が 重要だ。そして技能を従来の延長線上ではない全く別の次元までもっていくには創造力が不可欠である。
一見すると、下請的なものづくりに携わる人達は、取引先や親企業から言われるままに生産活動を行っていて、そこには創造力発揮の余地がないように見える。 しかし生産現場には程度の差こそあれ自律的な創意工夫が必ずあるはずである。そうでなければ作業や事業を長期的に継続できない。彼らがつくるものは親企業 や取引先などから設計図などで指定されているものかもしれないが、彼らは何か絶えず自己の課題をもってものづくりに対峙しているような気がする。とりわけ 熟練工と呼ばれる人達を見ていると、同じものをつくっていてもつくり方に創造力が込められているように思う。
2002年度、川崎市のか わさきマイスターに選ばれた木型工の前原さん(65歳)は15歳からで訓練校のようなところで3年間木工を習得した後、電話交換機の木製キャビネットなど をつくる工場で働いていた。しかし「同じもばかりをつくっていてはオリジナリティーが出せない」ので3年で辞めて大手重電メーカに転職する。ここで大型 モータの木型などつくる。木型は、木目に注意して狂いが出ても差し支えないつくり方をするのがコツだそうだ。得意先の(鋳物用)砂の性質に応じてつくるの も大事。手鉋などは自分で工夫してつくると言う。そこに7年勤めた後、大手自動車メーカに転職する。普通だとここに安住するのだが、彼は外人技術者に命令 されたとおりにつくるだけの作業に飽きたらず、ほどなく系列の木型屋に転職。そこで師匠となるべき工場長と出会い彼の独立とともにその会社に移り、経営も 勉強する。ここに3年近く勤めてから自宅で創業することとなる。
創業してからも別の木型屋の下に入って下請仕事をすることをよしとせず に全て鋳物メーカーからの直で受けるべく努力する。そのためにもつくり方のオリジナリティーにこだわってきた。途中、木型から発泡スチロール型へ転換す る。発泡スチロール型のつくり方は木型の応用だが、木よりもオリジナリティーのあるつくり方が出来ると言う。大きな型を組み合わせをよく考えて張り合わせ てつくる。この組み合わせの発想がポイントのようだ。最終的には同じ形になる型でも、どう組み合わせてつくるかで納期、鋳物の「抜け」の良さ、精度などが 変わってくると言う。ここにものづくりの創造性が見られる。
下請的な委託加工が専門のめっき業においても創造力を発揮している職人がい る。工業用クロムめっきでトップクラスのある中小企業にこの道48年のめっき工がいる。彼は複雑な形状をした部品の一部にピンポイントで所定の厚さの硬質 クロムめっきをすることを得意としている。通常、30ミクロンの精度というとこれにプラス30ミクロンでめっきをつけ、研削・研磨工程で残り30ミクロン を削って精度を出すものだが、これを彼はめっき工程だけで出すのである。航空機のエジェクションボディの内径の摩耗したところの修理めっきの写真を見せて 貰ったが、円筒の内側の一部にめっきを施している。こうすると新品より丈夫になるという。
このようなことが出来るためには、めっき液の 濃度の安定性や液の調合の工夫、電流のコントロールなどが重要なのだが、もう一つ彼でなければのものがある。めっき治具の工夫である。いわゆる「引っ掛 け」をさらに複雑な治具化して電流のプラスとマイナスの流れをコントロールし、液の接触をコントロールして必要な箇所にめっきをつけるのである。見せて頂 いた様々な治具はまさに発明品のようであった。治具の材料は鉄、銅および樹脂で日曜大工用品店などで購入できるようなものであるが、ここにめっきのノウハ ウを集約させてつくる。めっき液の中の状況を読むことが出来るような能力と発明家的なセンスがなければ簡単にはつくれない代物だ。
いず れの事例もいわゆる製品革新ではなく工程革新である。彼らを見ていると、仕事に熱中し、熟練度を向上させたその果てに、「思いつき」や「面白さ」を大事に して、原点に戻って発想の転換をしているような気がする。その意味では製品開発と同じような創造力が工程革新にも要求されると言えよう。
所定の設備機械を使って精度を向上させるための基本は「10年1ミリ」という漸進的革新の努力であろう。しかしこれを「5年1ミリ」にするには方法や手順 を変えたりバイトや治具を工夫するなどの発想の転換が必要となるのではないか。ものをつくる作業における革新にも創造力を発揮する余地は十分にあると思 う。人間のやりがいは創造性の発揮にあると考えるならば、ものづくりが本質的に内包する創造性をもっとアピールしていくことが、この世界を振興することに つながるのではないだろうか。