暑いです。営業マン時代に染みついた習性で、どうしてもワイシャツにネクタイ、そして上着を着て(持って)いないと落ち着かないのです。汗だくになり、
打ち合わせ、急冷、移動、再び汗だく、打ち合わせ、急冷・・・・と一日に何度も繰り返されると、金属疲労状態に陥ります・・・それでも昔、営業で歩いてい
た地域に差し掛かると、なんとなく懐かしくて、よくさぼっていた書店や喫茶店が健在かなと、汗を拭きながら、思う今日この頃です。
今年は、偶然ですが墨田区、愛知県、大阪府高槻市の東名
阪の三自治体の工業活性化のお仕事をすることになりました。いずれの自治体も「工業」、「製造業」のこれ以上の衰退をくい止めたいと真剣です。しかし、一
筋縄ではないかない難しい課題です。もう少ししたら、また、それぞれの地区からのリポートをみなさんにしたいと思っています。愛知県は、工業製品出荷額日
本一の「ものづくり」地区なのですが、なかなか知られてません。それらを検討するために、みなさんに愛知がどんなイメージを持たれているか県庁の方でアン
ケートを集めています。みなさんのアイデアも参考にしていきたいので、どうぞ、御協力ください。
(編集者注:URLは削除されました)
今回の担当は、中村研究員です。
・The OMORO-MONOLOGY ~せんべいを焼きながら考えた~
今、小学生の総合学習用の副教材づくりのお手伝いをしている。テーマは「ものづくり」。で、ライターさんやカメラさんと一緒に、草加煎餅づくりの現場を訪れました。
草加市の文化会館で、まず草加の伝統産業の基本知識を仕入れ、そして草加煎餅の手焼きを実体験。指導してくれるお姉さんは、にこやかにしかし厳しい・・・・ 取材の一団は、すっかり「大人の社会科見学」状態。
その後、草加煎餅屋の五楽堂さんを訪問しました。煎餅っていうのは、餅を伸ばして焼くだけかなと思っていたのです。ところが、これがなかなか手間がかかっ ています。1.うるち米を洗い、石うすで粉にする。2.粉に熱湯を加えてこねる。3.一握り程度の大きさにして、せいろに並べる。4.せいろを重ねて蒸 す。5.蒸し上がったらつく。6.水にさらしてアク抜きをする。7.水を加えてもう一度きめ細やかにつく。8.同じ厚さにのばして型抜きをして天日で干 す。9.干し上がった生地を焼く。10.押し瓦で形を整えながら焼く。11.焼けたらすばやく醤油をぬって乾かす。
もちろんここに書いたのは、古来のやり方で、いまは様々な機械を用いますし、乾燥も天日ではなく、ボイラーで乾かしたりしますが、それでも相当の手間がかかっています。焼く工程も専用の機械で焼いていきますが、フルオートとは行かず、灼熱の中で人が働いています。
「やはりねえ、天日で干して、手焼きしたものは、味が違いますよ。でもねえ、手間がかかって、それなりの値段にしないと割に合わないからねえ。」と社長さんは話します。
草加には、煎餅屋さんが約50軒。通りを車で走っていても、煎餅屋さんが目に付きます。煎餅屋さんにも色々な種類があって、五楽堂さんのように生地から作 るところもあれば、生地を他から仕入れて焼くところなど色々だそうです。ただ、焼き方や醤油の味付けなど、それぞれ個性があるそうです。
「日本 の煎餅の最大の産地は、新潟。さらにそこの数社でシェアの半分以上が持って行かれている」と言います。新潟以外、草加も含む他の産地のシェアが落ちて、苦 戦している理由は、流通の変化が第一だそうです。個人のお菓子屋さんが少なくなり、チェーン店やコンビニなどになると、相当量の供給あるいは配送が求めら れます。中小のメーカーでは、対応できず、だんだんと需要が減少してきたのです。全体の消費量そのものは、そんなに落ちてはないのですが、寡占化が進んで いる訳です。
そう言えば、以前、航空会社に勤務していたとき、盆暮れに東京のある老舗と言われる煎餅屋さんから煎餅の詰め合わせが届い ていました。不思議に思って、上司に聞いたところ、「あはは、そこの煎餅はさ、実はタイで焼いているんだよ。輸入して、包装は日本でしてるんだ。あ、秘密 だよ。」と笑って言われたことがありました。煎餅用の米も、量販用の物は輸入品が使われるケースが多い。日本の伝統的食品にも、輸入品が多くなり、低価格 化は進んできた。
「まあねえ、そういう訳でさ。草加の煎餅屋の多くは、大量生産の量販用では勝負でいないので、贈答用の高級品に活路を 見いだして行こうという感じだね」そう五楽堂さんは言います。「もちろんねえ、本当は手焼きだけで商売が成り立つようになればいいんだけど、値段も高くな るし、そんな高い物ばかり売れるわけではないので、機械生産のものも作って、バランスを取ってます」とおっしゃる。「しかしさあ、都内であっちこっちで 売っているいわゆる草加煎餅なんて、どこで作っているもんだかねえ。」
煎餅を焼く機械は、そのリズミカルな動きがおもしろい。醤油を塗 る機械は、なかなかの出来である。「機械でやる場合は、本当は、ドボンで醤油の中をくぐらせるタイプなんだよね。でもね、それだとやっぱり美味しくない。 手でやる場合は、ハケでぬるんだもの。」新しく開発した機械の中を覗くと、ちょうどブラシの中を煎餅がくぐり抜けるようになっている。「鉄工所の親父が、 もう勘弁してくれって言うほど、色々言ってね」と笑う。様々な機械もオーダーメードで、地元の機械屋さんが作るのだ。「そりゃさ、煎餅屋によって、色々と こだわりがあるでしょ。」
輸入品の増加と、低価格化。大手資本の寡占化と、中小のニッチ化。話を聞いていると、草加煎餅も、今の日本の 「ものづくり」のやはり一部なんだと、納得してしまう。衰退が続けば、煎餅産業を支えてきた地元の機械金属業も、やがては消えていくことになるのだろう。 地域の経済という視点で考えると、どうも納得がいかない。しかし、安い物に惹かれる一消費者としての自分もいる。グローバル化、国際化が、我々の生活にど ういった影響をこれから与えていくのだろうか。タイ米でタイで焼かれた「手焼き煎餅」を、「安くなっているんだし、味も変わらないんだから」とのんびりと 食べていられる時代は、本当に良い時代なのだろうか。いや、そういった時代は、あとどれくらい続くのだろうか。「自由貿易化」は、グローバル化の大前提 だったはずだし、先進国のグローバルスタンダードだったはずである。しかし、ここ数年、ヨーロッパでは、「自由貿易」反対が強まっている。正解の無い問題 だ。
堅くて味合いのある草加煎餅をかじりながら、そんなことを考えた。その時、五楽堂さんが言った。「その煎餅ね、若田さんが、宇宙船の中で食べたのと同じだよ!うちの煎餅が宇宙に行ったの。」
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(編集者注:URLは削除されました)
今回の担当は、中村研究員です。
・The OMORO-MONOLOGY ~せんべいを焼きながら考えた~
今、小学生の総合学習用の副教材づくりのお手伝いをしている。テーマは「ものづくり」。で、ライターさんやカメラさんと一緒に、草加煎餅づくりの現場を訪れました。
草加市の文化会館で、まず草加の伝統産業の基本知識を仕入れ、そして草加煎餅の手焼きを実体験。指導してくれるお姉さんは、にこやかにしかし厳しい・・・・ 取材の一団は、すっかり「大人の社会科見学」状態。
その後、草加煎餅屋の五楽堂さんを訪問しました。煎餅っていうのは、餅を伸ばして焼くだけかなと思っていたのです。ところが、これがなかなか手間がかかっ ています。1.うるち米を洗い、石うすで粉にする。2.粉に熱湯を加えてこねる。3.一握り程度の大きさにして、せいろに並べる。4.せいろを重ねて蒸 す。5.蒸し上がったらつく。6.水にさらしてアク抜きをする。7.水を加えてもう一度きめ細やかにつく。8.同じ厚さにのばして型抜きをして天日で干 す。9.干し上がった生地を焼く。10.押し瓦で形を整えながら焼く。11.焼けたらすばやく醤油をぬって乾かす。
もちろんここに書いたのは、古来のやり方で、いまは様々な機械を用いますし、乾燥も天日ではなく、ボイラーで乾かしたりしますが、それでも相当の手間がかかっています。焼く工程も専用の機械で焼いていきますが、フルオートとは行かず、灼熱の中で人が働いています。
「やはりねえ、天日で干して、手焼きしたものは、味が違いますよ。でもねえ、手間がかかって、それなりの値段にしないと割に合わないからねえ。」と社長さんは話します。
草加には、煎餅屋さんが約50軒。通りを車で走っていても、煎餅屋さんが目に付きます。煎餅屋さんにも色々な種類があって、五楽堂さんのように生地から作 るところもあれば、生地を他から仕入れて焼くところなど色々だそうです。ただ、焼き方や醤油の味付けなど、それぞれ個性があるそうです。
「日本 の煎餅の最大の産地は、新潟。さらにそこの数社でシェアの半分以上が持って行かれている」と言います。新潟以外、草加も含む他の産地のシェアが落ちて、苦 戦している理由は、流通の変化が第一だそうです。個人のお菓子屋さんが少なくなり、チェーン店やコンビニなどになると、相当量の供給あるいは配送が求めら れます。中小のメーカーでは、対応できず、だんだんと需要が減少してきたのです。全体の消費量そのものは、そんなに落ちてはないのですが、寡占化が進んで いる訳です。
そう言えば、以前、航空会社に勤務していたとき、盆暮れに東京のある老舗と言われる煎餅屋さんから煎餅の詰め合わせが届い ていました。不思議に思って、上司に聞いたところ、「あはは、そこの煎餅はさ、実はタイで焼いているんだよ。輸入して、包装は日本でしてるんだ。あ、秘密 だよ。」と笑って言われたことがありました。煎餅用の米も、量販用の物は輸入品が使われるケースが多い。日本の伝統的食品にも、輸入品が多くなり、低価格 化は進んできた。
「まあねえ、そういう訳でさ。草加の煎餅屋の多くは、大量生産の量販用では勝負でいないので、贈答用の高級品に活路を 見いだして行こうという感じだね」そう五楽堂さんは言います。「もちろんねえ、本当は手焼きだけで商売が成り立つようになればいいんだけど、値段も高くな るし、そんな高い物ばかり売れるわけではないので、機械生産のものも作って、バランスを取ってます」とおっしゃる。「しかしさあ、都内であっちこっちで 売っているいわゆる草加煎餅なんて、どこで作っているもんだかねえ。」
煎餅を焼く機械は、そのリズミカルな動きがおもしろい。醤油を塗 る機械は、なかなかの出来である。「機械でやる場合は、本当は、ドボンで醤油の中をくぐらせるタイプなんだよね。でもね、それだとやっぱり美味しくない。 手でやる場合は、ハケでぬるんだもの。」新しく開発した機械の中を覗くと、ちょうどブラシの中を煎餅がくぐり抜けるようになっている。「鉄工所の親父が、 もう勘弁してくれって言うほど、色々言ってね」と笑う。様々な機械もオーダーメードで、地元の機械屋さんが作るのだ。「そりゃさ、煎餅屋によって、色々と こだわりがあるでしょ。」
輸入品の増加と、低価格化。大手資本の寡占化と、中小のニッチ化。話を聞いていると、草加煎餅も、今の日本の 「ものづくり」のやはり一部なんだと、納得してしまう。衰退が続けば、煎餅産業を支えてきた地元の機械金属業も、やがては消えていくことになるのだろう。 地域の経済という視点で考えると、どうも納得がいかない。しかし、安い物に惹かれる一消費者としての自分もいる。グローバル化、国際化が、我々の生活にど ういった影響をこれから与えていくのだろうか。タイ米でタイで焼かれた「手焼き煎餅」を、「安くなっているんだし、味も変わらないんだから」とのんびりと 食べていられる時代は、本当に良い時代なのだろうか。いや、そういった時代は、あとどれくらい続くのだろうか。「自由貿易化」は、グローバル化の大前提 だったはずだし、先進国のグローバルスタンダードだったはずである。しかし、ここ数年、ヨーロッパでは、「自由貿易」反対が強まっている。正解の無い問題 だ。
堅くて味合いのある草加煎餅をかじりながら、そんなことを考えた。その時、五楽堂さんが言った。「その煎餅ね、若田さんが、宇宙船の中で食べたのと同じだよ!うちの煎餅が宇宙に行ったの。」
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