今年も終わり、なんて言ってるうちに、恐怖の年度末。毎年のことながら、どこかに逃げてしまいたいと思う毎日です。ああ、確定申告もしなきゃいけないし、きゃああああ。
 という今月のもの国総研、中村主任研究員でした。
・The OMORO-MONOLOGY   駆けずり回って何が悪い!

  中小企業の経営者には、ユニークな方が多い。名古屋で懇意にしていただいているある社長も、非常にユニークで、また行動力がすごい。本職は、製造業なのだ が、なにか成功している企業があると聞くと、誰かに紹介してもらって訪れる。東京で、中小スーパーでありながら好成績を上げていると聞けば、営業のついで に訪ねてくる。名古屋で、回転すし屋で業績を伸ばしているのに、今度はウナギ屋に転業しはじめた企業があれば、その理由を経営者に聞き、実際にウナギ屋で 食事もする。万事が万事、その調子である。下手な経営研究家などより、ずっとよく知っている。「どこにアイデアころがっとるかわからんでしょー。全く違う 業種でも、ほーなるほど、こりゃ応用すりゃあ、うちでも利用できるわ、いうんのがある」と名古屋弁丸出しで、語ってくれる。社長は、私の職業をおもんば かって「先生」と称号を付けて呼んでくれているが、私は密かに「私の大先生」と思っている。

 その私の大先生が、時々、こうぼやくことが ある。「なんか最近、訪ねてきては、なんかいい話ないかい、儲かる話ないかいとだけ言ってる経営者が多い。そんなうちきて、愚痴っている暇があれば、営業 でも行けえいうんだけど。」大先生曰く、「不景気だ、儲からない、もうだめだ」などと言いながら、フットワークの悪い経営者多すぎるということになる。 「僕なんか、東京出張は日帰りよ。朝一で東京行って、午前中にお客と話して、新幹線乗って、名古屋に帰って、すぐ見積もりだして送るでしょ。そのあと、今 度は大阪のお客の所に行くときもある。」新幹線や航空機の発達、さらには宅配便などの普及、そして電話やファクス、インターネットで、お客はスピードを要 求するようになってきている。しかし、電話やファックス、インターネットだけで商談が成立するところまでは、なかなかいかない。そこで、中小企業の強み。 経営者自ら出かけて、即断即決して商売をまとめていく。「みんな、売れん、景気悪いと言っている。当たり前でしょう、今までと同じところで仲間内でぼやい ているだけなんだもの。ここでダメなら、あっちで。あっちがダメなら、そっちでという気概ないとやっていけんでしょう」と笑う。

 おもし ろいことなのだが、名古屋や大阪で、「東京にはまだまだ仕事がある。東京に攻め込みましょう。」と提案しても、なかなか賛同が得られない。曰く、「遠 い」、「東京人は冷たい」、「東京の連中とは商売ができない」と言うのだ。この時代に信じられないが、実際そうなのだ。「経済指標を見ても、関西は大幅に 落ち込んでいる。東京も落ち込んではいるが、市場が大きい分、チャンスはある」と言っても、慎重論が先に出る。

 確かに、東京の展示会 で、関東の業者が「大阪は信用できんからなあ」とか、「価格が安いだけでしょう」という声を実際に耳にした。それらを言われて、とたんに元気をなくした関 西の経営者も目にした。しかし、営業ってそんなもんじゃないでしょうか?最初から、ほいほい買ってくれるなら、世話はない。私も、営業マンをやっていたこ とがあるが、大概のことは言われるもんだ。客先に行ったものの、足を踏み入れられず、前の喫茶店で一時間以上、思案に暮れたこともあった。だから、学者の 世界に踏み入れて、社会経験もなーんもない先生が、非常に「営業職」を軽視するのも、むかつくのだが、逆に必要以上に躊躇する経営者の方たちにもとまどっ てしまうのだ。

 東京だから、大阪だから、名古屋だからと気にする声は、少なくない。それは、もちろん経営者だけではなくて、学生たちに も当てはまる。特に関西から東京に打って出るというと、どうも外国にでも行くかのような大仰なことのように言う。国際化だの、グローバルだの、IT化だの 言っている一方で、新幹線でわずか二時間半の距離を躊躇する傾向は、奇妙だと思うのだが。どこから、こうした感情は出てくるのだろう。本当は、みんな困っ ていないのではないかななどと思えてしまう。

 歴史を調べてみると、面白いことがある。大阪企業の代表の阪急の創始者小林一三は、実は東 京の人である。左遷されて、くらーい気持ちで大阪にやってきたことを彼は後に記している。だから、東京への捲土重来は彼の夢だったのだ。東京宝塚、すなわ ち東宝は彼の宿願であったのだ。大阪の商人の代表のように言われている小林にしてそうであり、多くの大阪商人は、ネイティブ大阪人であることは稀である。 そう考えると、大阪商法などとこだわりつづけることが、いかに「あほ」くさいことか理解できるだろう。

 我が大先生は、「どうせ私らすで に脳みそパスパスでしょ!」と、牛しゃぶを突いている。「明日は朝一で、大阪。昼にいったん名古屋に戻って、その後、東京ですわ。いまどき、社長が困った 困ったいうて会社におっても、どうにもならんでしょ!」「社長、あんたは偉い!」また、元気もらって、がんばります! 中小企業の強みとは、なんでしょう か。やはり、フットワークの軽さではないでしょうか。景気が良かった頃は、まるで四畳半一間のアパートで生活していたように、手が届くところに仕事が転 がっていた。でも、今は違います。セーター着て、コート着て、そとに出かけないと仕事はないのです。ITやボーダレスやと言うのなら、かけずり回りましょ う、思い切って。(なんか自分に言い聞かせているようになりましたが。笑)

                          (C)Tomohiko Nakamura 2002