大阪王将の店員さん | 快児オフィシャルブログ「快児ワードファクトリー」Powered by Ameba

大阪王将の店員さん

大阪芸術大学に通っていた頃、腹いっぱい飯が食いたいと思ったら、必ず大阪王将という中華料理屋に行っていた。大阪王将とは、よくある餃子の王将に勤めていた人が、反旗を翻し独立して作った偽の王将だ。本家より味が濃く、餃子がぱりっとしていてうまい。そこで俺はいつも「ラーメンセット」を注文していた。ラーメンに半チャーハン、サラダ、から揚げがついて780円。ほんとに腹が減ってる時は、それに餃子を追加する。

ある日腹が減って店に入り、いつもどおりラーメンセットを注文をしようとすると
「ラーメンセット」
と、俺より先に店員が言った。
見ると可愛らしい女の店員がにこにこしながら
「ですよね?いつもそれ頼むから」
と言う。
「あ、そ、それで」
俺はしどろもどろになりながらそう返した。

その日から、王将に行けばその子と少し話すようになった。
服の話、音楽の話なんかをして、なんだかいい気分でいつも店を後にした。

その子に会いたいので、以前より王将に行く回数が増えた。
そんなに腹が減ってる訳ではなくても店に入り
「ラーメンセット?」
と、彼女が言うのを聞いて楽しんだ。

頻繁に通うようになって一ヶ月くらいしたある日、彼女は
「ラーメンセット?」
とは言わなかった。代わりに
「うち今日で辞めるねん」
と言った。
「あーそうなんやー・・・」
当時今よりシャイだった俺は、うまい言葉が思いつかず、それだけ言って、出されたラーメンをただただ啜っていた。

その時だ。カウンターの上を「シャーーーー!」とコップが滑ってきたのだ。昔のドラマのバーで、キザな男がやるあれだ。
どうにか俺はそのコップをキャッチした。
そのコップの底には伝票がくっついていた。広げてみるとそこには
「meのベル番」
と書かれていた。なんと大胆なやつ。ここはバーではなく餃子の王将なのに。

で、その子はめでたく俺の彼女になった。

しかしだ。後からいろいろとおかしなことがわかってくる。
その、コップを滑らせてきた時に真横にいた男の店員が、その時付き合っている彼氏だったという。彼氏の面前でそんなことをしたわけだ。
そして「me」とはそのとき書いただけではなく、彼女は自分のことをおそ松くんのイヤミのように「me」と呼ぶのであった。「み」が付く名前でもないのに。

付き合って一ヶ月した頃、俺はインフルエンザにかかった。
下宿から実家に帰り、6日ほどベッドの上でうんうんうなっていると彼女から電話がかかってきた。
「大丈夫?まだ直らへん?」
「おー。でもちょっとましになってきたからあさってくらいにはそっちに帰れると思うわ」
「そっかー。よかった。・・・それよりな、快児が一週間もそっちおるから、うち元彼とより戻っちゃてん」

な!!!!!

インフルエンザはこじれた。なんと大胆なやつ。