

朝から書き物をしていたおじいさんは、障子を照らす陽射しがだんだん明るくなっていくのに誘われるように立ち上がり、縁側に出ました。
草も木も枝葉をいっぱいに茂らせ、庭からずっと境内まで広がる緑が目に痛いくらいです。
立夏も過ぎて陽気も落ち着き、春先からここまですくすくと無事育ってきた植物や生き物たちの成長もすっかり落ち着き、この状態を指して、「小満」。
「うまく名づけたものじゃ」
おじいさんは思わず呟きました。
と、門のほうからみよこが庭に入ってきました。いつになく元気がなさそうに見えます。
「みよこ」
呼ばれてみよこはやっと顔を上げました。
「ああ、おじいちゃん、おはよう」
「どうしたんだみよこ、今日は眠そうじゃな、たしか昨日はおじさんのところに泊まってきたんじゃろう?」
「おかいこさまよ」とみよこは言いました。「一晩じゅうシャカシャカシャカシャカ、すごい音なの、もう今でも目をつぶると聞こえてくる」
二十四節気”小満”の初候
『蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)』〜 五月二十一日から五月二十五日頃
※ 絵 / 豊原国周
※ おはなしのフルバージョンは仕立てとおはなし処Dozoでどうぞ(詳細はこちら)
※ 2018年、『七十二候ものがたり』を始めるに当たって綴った思いはこちら。
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引用元:蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)