7月×日、3年ゼミ、映画「仮面病棟」(2020)についての学生発表。

 

医者の速水(坂口健太郎)は恋人を交通事故で亡くしたばかり。ある夜、亡くなった恋人の兄でもあり、先輩でもある、小堺の代わりに田所病院の当直をやることになった。担当看護婦は、ベテランの東野と寿退社を控えた佐々木。「何もないまま朝を迎えますよ」という東野の言葉があやしげに聞こえる。江口のりこが演じているところがあやしい。

 

すると、1階で、川崎瞳(永野芽郁)という女子大生がピエロの仮面をかぶった男に撃たれたという。ピエロが「すぐ手術しろ」というのだが、看護婦たちは頑なに「手術室は使えません」という。速水が無理やり手術室に入ると、立派な器具が揃っていて、いつでも使えるようになっている。奇妙だ。

 

夜中の病院。ピエロの立てこもりにつきあわされたのは、速水、手術を終えた瞳、看護婦二人、田所院長。高嶋政伸が院長の役をやっている時点で、あやしくないわけがない(こういう独特の味を出せる貴重な役者ですね)。

 

速水と瞳は行動を共にする。ピエロはお金以外に何か目的があるにちがいない。

 

あやしげなファイルが見つかった。「新宿11」とか「池袋08」とか。

 

瞳の打ち明け話。「私も大切な人を亡くしまして」。「両親を早くに亡くして姉が高校にも行かずに私の面倒をみてくれたのですが. . . 」。

 

暗い院内を歩き回っていると、看護婦の東野が胸を刺されて絶命していた。一体誰が?ピエロは1階にいたはず。

 

速水はふとしたことから、1階の手術室に隠し扉を発見する。そこにはエレベーターがあり、院長室につながっている。そこにも隠し扉があった。扉を開けると、あやしげな部屋があり、ベッドの上に少年が寝かされていた。

 

田所病院の秘密とは、非合法の腎臓移植手術であった。身元不明の患者の腎臓を政界の大立者などに移植して、お金を儲けていたのだ。

 

ピエロはその悪を成敗しようとしていたのだ。速水は途中でピエロの正体に気がつく。「小堺先輩ですよね?」

 

実は、宮田という理学療法士がピエロであった。速水がスタンガンで気を失っている間に、みんな殺され、ピエロも死んでいた。

 

事件は終息したが、不思議なのは瞳がどこにもいないことであった。一体どこへ?

 

実はここでどんでん返し。瞳が黒幕だったのだ。永野芽郁が演じているからといって、油断することなかれ。たった一人の肉親を不法腎臓移植に利用されたことを恨んで、田所病院に復讐を仕掛けるため、やはり祖母を同じ理由で亡くしていた宮田を利用したのだ。

 

予想外でした。

 

原作は現役のお医者様の知念実希人氏。病棟シリーズとか死神シリーズとか、すでにたくさんの小説をご執筆されているらしい。

 

病院って闇があるのですね~。とフィクションと現実を取り違えてはいけませんが。

 

ダメだしさせていただければ、「去年の冬、きみと別れ」や「脳男」とも関連しますが、現代日本には、両親を早くに亡くした人々が多いのでしょうか。

 

ものすごい復讐劇もしくは非情な犯罪を行う人間には、動機づけが必要です。例外的に悲惨な過去を作り出したいが、『飢餓海峡』ではあるまいし、どん底の貧乏は現代日本にはない(もちろん、隠れた貧乏はありますが、『飢餓海峡』レベルの話ですよ)。

 

または、『ハムレット』のように、王位簒奪と関係させるわけにもいかない。

 

そうなると、孤独な境遇を何とかつくりだすことになるのでしょう。

 

でも、何だかんだいっても、スリル満点のエンターテインメントになっています。『ハムレット』では、こうはいきませんからね。ハムレットはかなりちゅうちょして、To be or not to beとかいって、心情の紆余曲折はおもしろいのだけれど、ストーリーはなかなか進んでいきませんからね。

 

末筆ながら、知念様、お医者様と小説家との両立、大変かと思いますが、またおもしろい作品で読者を楽しませてくださいますように。