世界が全ての色を失い、時が静止したように静かになります。
それが一刹那という恐ろしく短い時間の持つ独特の空気なのかもしれません。
『ガッ!』
『ガガッ!』
激しい音が続いて生じます。
ですが、ミィの身体にその衝撃は訪れません。
ミィは、痛みを感じるまでもなく死んでしまったのかしら?と思いました。
先ほどとは違う一瞬、永遠にも感じるような間をおいて、ミィ目をあけます。
目を瞑る前とあとで、特に変わった所はありません。
ミィの身体はなんともないようです。
「い、痛やぁ!」
「ワ、ワシらの嘴が!」
傷を負っていたのは、なぜか2匹の禿鷹の方でした。
片方の禿鷹は嘴がボロボロに崩れ、もう片方は大きな罅が何本も入っています。
ミィには、なにがなんだか訳が分かりません。
「へへ?ミィ、無事かい?何事もないかい?」
のた打ち回る2匹の禿鷹、少し離れた所にひっくり返っているロンがいます。
「ああ、ロン。あなたがあいつらから庇ってくれたの?痛くない?」
ミィはロンに駆け寄ります。
どうしたのかは分かりませんが、ロンが身を挺して助けてくれたのには違いがないようです。
「へへへ。イワクダキガメをナメてもらっちゃ困るよ。それはもうこの世の何よりも硬いんだぜ。」
ミィはロンを正位置に戻してやりました。
「ありがとう、ミィ。例えどんなに硬くても、俺っちは逆さになるとダメなんだ。お終いなんだよ。」
ミィに立たせてもらったロンは、顔を赤くして照れています。
「じゃぁ、私もロンの命を救ったのね!」
ふふ、とミィは嬉しそうに笑います。
「そうだね、ミィは俺っちの命の恩人だ。同じだね。」
笑いあうミィとロン。
しかし、危険が去ったわけではありません。和やかな空気は、本当にちょっとの間だけでした。
「猪口才な亀如きが、邪魔をしてくれるな。」
ボス禿鷹が、嘲笑交じりに語りかけます。一瞬で空気が荒んだものへと引き戻されました。
ボス禿鷹は顔色ひとつ変えていませんでした。
2匹の手下がやられたことを、気にも掛けていないようです。
冷たい目で、残酷な鍵爪で、朱に染まった嘴で、全身を悪意の眼差しにかえて、ミィとロンを見やります。