影は全部で3つでした。瓦礫の上に降りたちます。
「やぁ、お嬢ちゃん。」

カタカタと嘴を鳴らしながら、そのうちの一匹が語りかけます。

「あ!」

「ミィ、あいつを知ってるのかい?」

ロンが聞きます。

「森であった禿鷹よ。とても嫌なヤツなの。」

ミィはそいつを覚えていました。同時に、とても恐ろしい感情がミィの中に蘇えります。

ガタガタと震えていまうミィ。震えたくなんてないのに身体がいうことをききません。

「まだ、死者にはなっておらんようだね?」

クククッと意地悪そうに笑います。前に見たときとは違う場所が、濁った朱で染まっています。


「なによ!なんの用よ!!」

ミィは恐怖をおしのけ、精一杯強がりをしてみせます。怖がってなんてやんないんだから。

そんなミィの心をを見透かしたかのように、禿鷹はミィを見て笑っています。

残りの2匹の禿鷹も同じ笑い方をします。

2匹は、森であった禿鷹を囲むように立っています。

大きさは一回り小さくはありましたが、残忍そうな顔はみな似通っています。

「それはこちらの台詞ぞ。このゴント砂漠は我等の縄張りなのだ。何をされても文句は言えんよ。」

真ん中の禿鷹が笑いをそのままに、言いやります。

「クククッ、頭。それは違いますぞ、世界中が我等のものではありませぬか。」

右の禿鷹がニヤニヤ笑いを湛えながら、森であった禿鷹に語りかけます。

どうやら森であった禿鷹が、一番偉いボスのようです。

「そうだな、まったくその通り。」

満足げにボス禿鷹が頷きます。

取り巻きの2匹が、愉快そうに笑います。本当に底意地が悪そうに、笑っています。


自分たちだけ悦に入った禿鷹に、ミィが怒鳴ります。

「私はパパとママを探しているの!たまたまここを通っただけだわ。」

こんな性悪な禿鷹をいつまでも相手にしたくありません。

ですがミィにも分かります。禿鷹が何もせずにここを通すはずがないと。

「ククッ、お嬢ちゃんは不法侵入という言葉を知らんらしいな。ここは我等のものなのだぞ。」

左の禿鷹が嬉しそうにいいます。

「そうさ、我等のものだ。そして、縄張りを侵すものは、往々として餌となる末路を辿るのよ。」

右の禿鷹が仕方ないことなのだよ、という様子で諭します。

ミィたちと禿鷹の間に冷たい空気が走ります。

砂漠はジリジリと肌を焼くようなのに、その空間だけ切り取られたように別世界の空気が広がります。

いよいよ、なにかを仕掛けてくるのだとミィにも分かりました。

2匹が身構えます。今にも飛びかかろうと翼を持ち上げ、身を低くします。

「お嬢ちゃん、そろそろ死者になってもらおうか。我らは腹が減って仕方がないのだ。…なぁ?」

ボス禿鷹がそういうと同時に、手下の2匹がミィに向かって、

凄まじい速さで襲いかかってきます。

ミィは、あまりの恐怖で身動きが取れません、覚悟をして目を瞑ってしまいます。

パパ、ママ、神様!!そう願って目を閉じてしまいます。

「クククッ!観念したか!!」

「ケケケッ!我等が腸に収まれぃ!」

身を強張らせ、両の腕で必死に身体を守ります。

2匹の残虐な嘴が、今にもミィを引き裂かんと風を裂いて迫ります。