いけどもいけども砂ばかり。

分かっていたことだけど、不毛な大地に嫌気がさしてきます。

最初はあれだけ元気だったロンでさえ口数が減ってしまい、黙り込んでいます。

口を開けば、砂利を含んだ風が遠慮なしに飛び込んできます。

ここでは、何もかもが風化し、砂漠の一部に変えられてしまいます。

草も木も、地走りネズミも猛毒ハイエナも、岩や瓦礫も、そしてミィもロンさえも。

油断をしたらお終いになってしまう砂漠。

「ロン、疲れたわ。ちょっと休憩しない?」

小さなミィはへこたれてしまいます。

「うん、そうだね。ちょっと休もうか。」

ロンはテコテコと駆けだし、目の前の砂丘を登りだしました。

そして、ピョンと一跳ねしてミィに言います。

「ミィ、この先に大きな岩が転がってるよ。そこの日陰でちょいと休もう。」

やっと休むことができる!そう思うとミィは目にも止まらぬ速さでロンの元へと駆けつけます。

さっきまで、鉛のように重かった足が、瞬時に羽根へと変わります。

丘の上から見下ろすと、下ったすぐそこに大岩がありました。後ろ半分は砂に埋まっているようです。

ミィの背を5、6人・・・いいえ、もっと足したくらい大きな大きな岩でした。

砂に埋まっていない部分は、ほぼ垂直で、だけど風に当たり続けているせいかひどくデコボコです。

その垂直な大岩が、いい感じにお日様を遮る壁となってくれているのです。

「ふぅ。」

やっと休める、とミィは一息つきます。

ロンも隣に寝そべります。

ずっと朝から歩き通しだったので疲れました。砂地に足を取られるので、いつもよりもっとずっと疲れるのです。

「どれくらい歩いたのか、全然わからないわ。」

太陽が空に姿を現してからだいぶ時間は過ぎていました。

心地よかった朝の空気は遠く彼方、今はまとわりつく熱気と砂ばかり。

日陰に入ったので少しはマシになりましたが、やっぱり暑いものは暑いです。

「そうだね、俺っちにもちょっと見当がつかないけど。ミィはがんばってるよ。がんばって歩いてる。」

「ありがとう。」

ロンが褒めてくれるので、まだがんばれそうです。

でも今は無理、暑さと疲れでヘトヘトです。

ズリズリと身体をひきずり、大岩にもたれかかるミィ。背中がひんやりして気持ちいい。

そのままボーっとしているミィ。

水筒の蓋を開けて少しだけ口に含みます。とても美味しいです。

ミィは今まで、ただの水がこんなに美味しいと感じたことはありませんでした。

大好きな流星イチゴの生絞りジュースと、同じかそれ以上に感じました。

水筒の蓋に水を入れて、ロンに差し出します。

「ありがとう、ミィ。」

器用に両前足を使ってそれを飲み干す、ロン。

「ぷはー、生き返る。生き返るね、ミィ。いくらか舌の滑りもよくなるよ!」

ミィは少し「しまった」と思いましたが、美味しそうに水を飲むロンは本当に元気一杯になったようなので、

「よかった」と思う気持ちの方がいっぱいです。

「もう少ししたら、出発しよう。お日様が真上に来る頃までにもう少し進んでおかないと。」

うん、とだけ答え、ミィは身体を休めます。

でも、特にすることもないので退屈です。

意味もなく、足元の砂を指でいじります。

”の”の字をグルグル、グルグル描きます。次は丸、三角、お家、山、お日様・・・。

せっせとラクガキ。だんだん楽しくなってきます。

ロン、パパ、ママ。どんどん描いては消し、描いては消し。

そのうち指先に、固いなにかが当たりました。ザラザラして、トゲトゲしたなにか。

興味をひかれたミィは、そのなにかが当たった部分の砂を払っていきます。

休憩の時間がラクガキに。ラクガキの時間が発掘に変わります。

ほどなくして、正体不明のなにかの正体を、ミィは探り当てたのです。

それは、何の変哲もないただの、石でした。ただの平らな石。

全部が姿を現した訳ではないので、大きさはわかりません。

ミィはがっかりしました。こういう行為には、なにかすばらしい結果を望んでしまうものです。

たとえば、盗賊の隠した宝箱とか。謎に包まれた古代文字の石版とか。

それが、ただの石。落胆は隠せません。

「はー。」

溜息がついてでます。折角の楽しい気持ちが台無しです。

その溜息に気づいて、寝ていたロンが近寄ってきます。

「どうしたんだい?ミィ、砂遊びかい?」

「ロン、私はさっきまで発掘家だったのよ。とても楽しい気分だったわ。でも今は台無しよ。」

ふんふん、と理由を聞いてロンは頷いています。

そして、ミィの掘り当てた石を見つめます、じっと見つめています。

しばらくの間、じっとしていたロンは言いました。

「ミィ、ちょっと離れてて。マント被って、離れてて。」

よくわかりませんが、ミィは言うとおりにして、影地の隅っこまで移動しました。

それを確認したロンは、身体を少し揺さぶって、ピョンと一跳ね。

空中でグルグル回転して、石に向って飛びこみます。

ブオォォォォ。

ロンが飛び込んだ瞬間に、激しい砂煙が上がります。

時折、礫がミィの所まで飛んできます。だからマントを被ってなきゃいけないんだ。

・・・オオオオオオオオオ・・・ン・・・ン。

暫くすると回転音は止みました。煙はまだ立ちこめています。

「ゲホゲホッ・・・ペッペッ・・・おーぃ、ミィ。もういいよ、こっちに来なよ。」

砂煙にロンの姿がシルエットとなって映ります。モヤモヤと朧気なロンの影が手を振っています。

なにかを発見したのでしょうか、声色はちょっと嬉しそうに聞こえます。

「ごらん、ミィ。こいつはちょっとしたものさ。」