「さぁ、準備はいいかい?いいのかい?お・・・、ミィ?」

ロンが真剣な顔をしながら尋ねます。

『ここはゴンド砂漠の入り口。未成年の立ち入りを禁ず。』

そう壁に殴り書きされた監視所・・・元監視所はその壁面を残してあとは砂屑になっていました。

「準備はいいわ、さぁ行きましょう。」

グィユルで半日かけて準備し、残りの時間は休憩に使いました。

ミィとロンの体力は万全です。

「よし、じゃぁ太陽が睨みを利かせる前に、さぁ行くかい。やれ行くかい。」

砂漠の夜はとても寒く、砂漠の昼はとても暑いのです。

今は空が白み始めたくらい。

太陽が昇りきるまで、進めるだけ進む予定です。

「それでもやっぱり暑いわね。」

「うん、とても暑いんだ。油断したら干からびちゃうぜ。」

そういうロンの口調はとても軽く、ミィは少し安心して、少しロンを頼りに思いました。

「あまり喋ると喉が渇くし、疲れっちまう。できるだけ無駄な会話はやめよう。」

そう忠告してくれたロンは、5分毎に話しかけてきます。

「大丈夫かい?」と心配してくれることもあれば、「ミィの好きなものはなんだい?」みたいな

特に重要とも思えないことも聞いてきます。

「ミィの好きな花の花びらは何枚だい?」という質問の時に、我慢ができなくなり、

ミィはロンに言います。

「もう、ロンったら!自分で喋るなって言っておいて、忘れてるの!?」

「え?」

ロンは吃驚しています。言ったことを忘れていたのでしょうか?

「それなのにロンったら、気が付いたら喋ってる。疲れちゃうじゃない。」

「ああ、ミィ。それは勘違いさ。俺っちは全然全然、喋ってないじゃないか。」

「嘘よ、隙もなく喋ってるわ。」

「そーかなぁ、いつもの俺っちに比べれば無口な方さ。」

それは確かに、一度に喋る量は減っていたけど・・・。

でもやっぱりロンはお喋りすぎだと、ミィは思いました。

まだロンはブツブツ言い続けていました。

「ロンだって喋ったら疲れちゃうでしょ?」

「そうかなそうかな?でも俺っち、喋ってた方が調子がいいんだ。黙ってると調子が悪い。」

ロンは少しだけ、申し訳無さそうに弁解します。

「そう、だったら仕方ないわね。それは仕方ないわ。」

ミィはもうずっと喋ってればいいんだわ、と思いました。
「うんうん、仕方ない。これは仕方のないことなんだよ。うん。」

「わかったわ、じゃぁロンの事お話してよ。私、聞いてるから。」

それが一番いいとミィは思ったのです。

「おお!そうかい?じゃあ俺っちの話をするよ。聞いててよ。話すよ。」

わかったわ、そう言い終わるか終わらないかのうちにロンは喋りだしていました。

「そもそも俺っちが生まれたのはだね・・・」

小さなミィと小さなロンは、ゴンド砂漠を進みます。

一人はウンウン、一人はペラペラ。

ゴンド砂漠はその無慈悲な両腕で二人をその懐に抱きます。

全てを拒む外面に、臆せず立ち入る者に、ゴンド砂漠は容赦はありません。

小さな二つの命をどうするのかは、乾いた大地と残酷の化身となった太陽を従える、

この砂漠が決めるのです。