三つ目の山を降りると、そこには砂漠が広がっていました。

今まで来た道の中で、一番暑そうで、一番寂しい所でした。

「ちょっとちょっとちょっと!そこのおチビさん!」

せわしない調子で、声が聞こえます。

「誰?誰なの?」

ミィは問いかけます。

「ここだよ、ここ!あーもう、トロイなぁ。」

ミィの目の前を影が通り過ぎます。下から上へ、上から下へ。

そこにはピョンピョン跳ねる、亀がいました。

「あら、亀さんだったの。気が付かなかったわ。」

亀は、ピョンピョン跳ぶのを、今度は左右に始めました。

「そうさ、俺っちはイワクダキガメのロン様さ、おチビさん。」

「私はミィよ、でもあなたより全然大きいわ。」

ミィはチビと呼ばれるのはキライです。

「チガウ、チガウ、チガウ。違うんだなー。」

ロンは飛び跳ねながら、指を左右に振ります。でも左右に跳んでるので格好はつきません。

「俺っちが言ってるのは、器さ。器。ワカル?器。」

「甲羅の器が大きいの?それは確かに私にはないものだわ。」

「ちっちっちっ、違うんだなぁ。まぁいい、まぁいいよ。」

ロンは、両手を少し上げヤレヤレ、と首を振りましたが、これもやっぱりよくわかりません。

何せ、ロンはずっとピョンピョン跳びっぱなしですから。

落ち着きのない亀だわ、とミィは思いましたが、口には出しません。だって私の方がどう見ても多きいもの!

「おチビさん」というのを、先んじて「ミィよ」と封じます。

「ああ、ミィね。ミィはどこに行くんだい?まさかこのゴント砂漠を行くのかい?まさかまさかまさか。」

「そのつもりよ、だって私は砂漠とは反対側から来たんだもの。戻るつもりはないわ。」

「ああ、ああ!なんてこった、なんてこった。そんなナリじゃ死んじゃうよ。砂漠は暑いんだ。」

「それくらい知ってるわよ、でもね、パパとママを探さなきゃいけないの。行かなきゃなの。」

ロンにつられて、ミィもせわしなく喋ってしまいます。

「へー、そうかいそうかい。パパとママをかい。」

「そうだ、ロン。あなた、私のパパとママ知らない?」

「うーん、そうだなぁ。俺っちは自分のパパとママさえ知らないからな。ミィのパパとママなんて知らないよ。」

「そう。」

ミィはとても残念でした。

「ああ、でもねでもね。この前、女の人に会ったよ。ミィによく似た顔をした女の人だったよ。うんうん。」

「それ、ママよ!絶対ママよ。前にゴドお祖父ちゃんが言ってたの、ママとミィは顔立ちがそっくりだって。」

ミィは嬉しくなって、ロンと同じように跳びはねます。

「それで?ママはどうしたの?」

「うーんうんうん。なんだったかな、そうだったかな、あれだったかな。」

「どうしたのよ。」

「うんうん、確かね。男の人を探してるって言って、砂漠に入って行ったんだよ。」

「絶対絶対ママよ、パパを探してたのよ。」

「そういやそういや、その女の人の前に、ミィによく似た瞳をした男の人にも会ったかな。」

「パパだわ、絶対そうよ。前にマイギー叔母さんが言ってたもの。パパとミィは目が似てるねって。」

「そうかいそうかい、ではあれだね。俺っちはミィのパパとママを知ってたんだね、なんだー。」

「そうよ、とてもすごいわ、ロン。どうもありがとう。」

ミィのやる気は取り戻されました。正直のところ、当て所もない旅にガッカリし始めてきていたのです。

でも、ロンのおかげでパパとママの事が少しわかったのです。

「それじゃあね、ロン。私はパパとママを追いかけなくちゃだから。」

「おいおいおい、おチビさん。最初の最初の最初の話を忘れたかい?」

「なんの話?」

「ここから先は、ゴント砂漠だってことさ、俺っちの話さ!」

「ああ、うん。そうね。ゴント砂漠って言うの?それがどうかしたの?」

「あーもうもうもう、ゴント砂漠は死の世界さ。おチビさんが行けるよーな場所じゃないんだ。」

確かに、果てなんてなさそうなその砂漠は、とてもとても辛そうな場所に見えます。

「あら、じゃあどうしたらいいの?私はこの先に進みたいのよ。」

「ふっふっふー、それはこの俺っちに任せてくんなよ。」

「ロン!あなた一緒にきてくれるの?」

「ああ、ああ、ああ、おチビさんみたいなおチビさんをみすみすゴント砂漠に放りこんだとあっちゃー、イワクダキガメの沽券に関わるってもんさ。」

「コケンってなに?」

「それはそれは、俺っちにもわかんねーんだな。でもこーゆー風に見得を切るってのは決まってるんだ。」

「ふーん、決まってるのね。それは大変だわ。」

「まぁまぁまぁ、そうと決まったらまずは準備さ!砂漠はとても過酷なんだ、ゴント砂漠はその更に2倍は過酷だよ!?」

「わかったわ。」

ロンの話だと、ここから北に暫く行った所に、村があるそうです。

そこで砂漠を渡る準備をするのだと。

そうと聞くと、ミィはロンを抱え北へ駆けだしました。

「ところでロン、私の名前は覚えてる?」

「ああ、おチビさんだろ?」