放射線治療は予定通りに進んでいる。



動かなければ、痛みは無くなったって言うけど

動くと痛いから

トイレ以外はベッドから降りなくなった。

一畳程のこのスペースが

今の父の世界。

健康なうちはわからないだろう。

このスペースから出られない辛さ。

まるで、日常の生活から隔離されたような孤独感。

見舞いに来た家族が帰る時
自分一人が置き去りにされたように思えて
寂しくて…寂しくて…


だから、父の時間を家族はメールで繋いだ。

一人じゃないよ。
繋がってるよ。


メールがあったから
会えない時間も一緒に過ごせた。

場所はそれぞれ違うけど
同じ時間に
同じテレビを見て
メールで感想をいい合って。
そんな些細な事なのに
同じ時間を過ごせる事で
時が繋がる。

少し昔ならこんなこと出来なかったから、時代に感謝。


父もマメに返信してくれるから

父の様子がよくわかって、私も安心だった。

58歳でメールを使いこなせるんだから、たいしたものだ。

文章も、しっかりしてる。



文の最後は

いつも

『ありがとう』

で、締め括られていた。





それがだんだん…




漢字の変換が出来なくなって

内容も短くなって

単語もちぐはぐ。


視力と、筋力が弱っているようだ。


それでもこれだけは言いたいんだっ
て伝わってくる。


最後の締めくくりの

『ありがとう』

だけは、きっちり打ってるから。





父と家族を繋いだメール。
たとえ、筋力が衰えようとも、体調が悪くても
父は止めなかった。






命が消えるその日まで








父が居なくなって暫くは、悲しくて見れなかったけど
最近やっと、読み返す事が出来るようになった。



その小さな携帯電話に
温もりを残したままの
沢山の
父の言葉。

この世に生きていた
証。








お父さん。ありがとう。