いよいよ
抗がん剤による治療が始まった。



父が受ける抗がん剤の効果は
ミラクルに効くというわけではない
と言う。



がんの進行を防いで、延命を期待するもの。


もちろん、抗がん剤によって癌が消える人もいるのだろうけど

父の場合は、かなり進行してしまったから…。




癌細胞を壊しながら、正常な細胞も壊してしまう
抗がん剤。

その副作用による苦痛と
体力の消耗を考えると

この治療を父に勧めた自分は、本当に身勝手だと思い申し訳なくなる…。


少しでも永く生きてもらいたい。
その一心で勧めたけど
私は、父の気持ちを聞く余裕がなかった。


苦しい思いをするのは
父なのに。




そして


点滴の針が腕に刺されると
管を伝う抗がん剤が、父の血管に流れてゆく。




緊張した面持ちで
針の刺さった腕を見つめている。

気分悪くない?


痛みなどは無いようだ。


万が一、針が外れ液が皮膚に付着すると、皮膚が焼けただれたようになるらしい。



そこまで強力な薬品なのに、癌を全滅させるのは不可能なの?








癌って奴は、本当にふてぶてしく
父の体に居座った…。