




そんな広田尚敬氏の作品の中から忘れられないのが、「レイル」誌(プレス・アイゼンバーン)1980年2月号に掲載されたグラフ「佐賀落日」です。晩秋の頃に佐賀駅の下りホームから夕焼けを大胆にアレンジした作品です。(ちなみに見開き写真の下り急行のサイドを光らせた写真はいわゆる「ウラ焼き」です。編集・印刷のミスだと思います。)
地元を題材としたということもありますが、何よりもこれまでの常識を覆すような斬新さに圧倒されました。そしていつかはこれと同じ写真を撮ることが目標となりました。ただ、この場所ではかなり長めのレンズが必要となり、当時まだ一眼レフカメラを持っていなかったため夢でしかありませんでした。
その後、ある程度機材もそろいチャレンジを試みたのですが、太陽の位置、空の焼け方などなかなかうまくいかず、しばらくは鉄道写真そのものを休止していたので、今回久しぶりのチャレンジとなりました。
掲載誌をお持ちの方はわかるでしょうが、この場所は30年前とさほど変わっていません。ただ、北側(右側)に鉄道無線用の施設が建ったため空の抜け具合が若干悪くなったようです。そして劇的に変わったのはそこを走る車輌、列車たち。30年前の当時もすでに電化されていましたが主力はいまだディーゼルカー。長大の気動車急行が幅を利かせていました。ブルートレインも今は走っていません。
30年前とほぼ同じ日に「佐賀落日」の再現を試みたのが今回の写真です。
2008/10/15・18 長崎本線 佐賀駅