先日の千葉県の豪雨。


夕方、妻から一言。


「明日仕事だから、ガソリンないし入れてきて」


普段なら「了解」で終わる話だが、この日は違った。


外は雨というより水の世界。道路は川になり、動かない車や半分沈んだ車が並ぶ。ウォーターパークだった。


「これ、ガソリン入れに行く状況か?」


一瞬迷う。しかし同時に別の恐怖がよぎる。


ガソリンを入れずに帰った場合の「なんで入れてきてくれなかったの?」という一言。これは豪雨より確実に怖い。


水害か、妻の圧か。二択の末、出発を決めた。


「満タンで行くしかない」


慎重に進み、なんとかガソリンスタンドへ到着。無事給油完了。


「よし、ミッション完了」


あとは帰るだけ。


だがここからが本番だった。さっきの道がさらに冠水している。


「さっきより増えてないか?」


同じルートは諦め、迂回しながら帰路へ。なんとか自宅に到着し、生還。


安心したのも束の間、テレビをつけると、さっき通った道路がニュースで映っていた。


「あと10分遅ければ水没の可能性があります」


……。


いや、ただガソリン入れに行っただけなんだけど。


帰宅後、妻からは特に反応なし。いつも通りの空気。


一応報告する。


「結構危なかったから、明日は早めに出たほうがいいよ」


妻は一言。


「知ってるわー」


知ってたのか。


こっちは知らずに命懸けだったんだけど。


その瞬間、思った。


「この人、災害級の大雨より怖いな」


もちろん口には出していない。


我が家では、水没した車より夫のメンタルのほうが深刻な被害だった。


これが、我が家の豪雨災害だった。