忙しかった3月も終わり、うまく休みと合ったので一龍齋貞寿先生の会に行ってきました。
朝少し早くに起きて新幹線でいざ東京へ。以前、行ったときは軽自動車で高速を飛ばしていきましたが、今回はのぞみでぴゅーんとうたたねしている間に到着です。神田神保町で町中華の「三幸園」さんで腹ごしらえしてから、いよいよ「らくごカフェ」へ。2列目中央に陣取りました。
前座は宝井小琴さん。はっきりとした活舌の良い聴きやすい話し方で琴星作の鬼退治シリーズ第一弾を演じられました。第二、第三弾と続くのでしょうか。成長が楽しみな若手の前座さんです。
続いて貞寿先生が黒紋付で高座に上がられました。今まで一龍齋では侠客伝をあまり演じない理由や、愛山先生から一人前と呼ばれるには侠客伝で啖呵が切れることと教えられたこと等を話されて、最近覚えている次郎長伝からの「秋葉の火祭り」をネタ下しで演じられました。枕でも話されていたのですが、侠客伝では「貫禄」という独特の価値観をどう表現するか、これが難しいとのこと。確かに愛山先生や阿久里先生のようなドスの効いた親分を演じ分けるのは、これからの課題とされました。
中入り後は「大高源吾の両国橋の別れ」と「赤垣源蔵の徳利の別れ」の二席。この二つのお話は大変好きなお話で、クライマックスでは必ず泣けてきます。伯山さんがYoutubeで「義士伝が現代でも共感されて愛されているのは、仇討の話に留まらず四七士それぞれの家族、親兄弟、友との別れをテーマにしているから」と話されていましたが、その通りで、大高源吾は俳句の友、宝井其角と両国橋の上で交わした俳句に密かに討ち入りの決意を込め、歌の謎が解けた宝井其角が討ち入りの際に隣屋敷から別れの句を交わす、そこには武士の忠義を称えて送り出そうとする其角と、武士として仇討ちを果たして二度と会えない別れを爽やかに告げる大高源吾の掛け合いが情感豊かに演じられました。
そして師匠貞心先生が得意としている赤垣を「さすが貞心先生のお弟子さんは違うね」と言われるように演じたい、と話されてからの「赤垣源蔵徳利の別れ」では別れを告げに訪れた兄の邸宅で、不在の兄の代わりに掛けれた紋付の着物を前に一人で酒を酌み交わして別れを告げる源蔵をしんみりと演じられました。意外だったのは源蔵に酒を準備したり言伝をうけた下女が嫁入り前の若い設定だったこと。勝手に源蔵を昔から知っている老婆のイメージでいました。また神田伯山先生のお話と最後の形見の品の件が少し違っていて、一龍齋の方にも味があると思いました。伯山先生の演じる兄伊左衛門は津川雅彦にしか思えないキャラクターですが、貞寿先生はもう少しトーンを抑えた感じで、討ち入りの義士の中に弟がいるのか心配する兄伊左衛門を演じられました。
今回の一龍齋貞寿先生の会は大好きな「大高源吾」と「赤垣源蔵」の二席を聴くことができて、おなか一杯大満足になりました。次回からも都合をうまく調整して高座を聴きに行きたいと思います。
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