2014.5.9 13:00
FOMCを読み解く今 回のFOMCの声明文では特に大きなサプライズはなかった。FRBのイエレン議長は長期の失業率がインフレ率を決めていて、長期の失業率が高い間は現在の 金融政策で進めると考えている。しかし、プリンストン大学のアラン・クルーガー教授をはじめ、この政策に疑問を呈する声も出てきた。今後の金融政策の注目 点は何なのか?解説は三菱東京UFJ銀行・鈴木敏之氏。
ちなみに、FRBは、この問題については、労働生 産性の伸び率が高まることを暗黙に想定している。はたして、その目論見の通り、労働生 産性の伸びが回復しないと、雇用統計の非農業部門雇用者数が増えることが脅威になる。賃金がはねれば、FRBの責務である持続可能な雇用最大化の「持続可 能」が損なわれるからである。
起きる可能性は明瞭ではないが、この雇用爆発は非常に厄介だ。前述した通り、金融緩和によって質的な面も重視する次 元の高い完全雇用を 目指すというのがイエレン議長の立場だ。労働者数の急増は短期間ならば、歓迎されるが、それが続くと、賃金上昇、インフレ圧力となることを心配しなくては ならなくなる。そうした事態が早く到来すると、今の量的緩和を秋に終了し、時間をおいて利上げという悠長な正常化は言っていられなくなる。後手に回ったと いう「Behind the Curve」の批判が沸き起こる。
それに金融政策を動かすことで応じるにしても、FRBが保有証券の償還分の再投資をとめ、過剰の準備を吸収してからでないと、金融政策はブレーキをかける方向に動けないという従来にはないハードルがある
ま た、急がざるを得なくなって、臨時の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも開こうものならば、フォワードガイダンスの公約はどうなっ たのかという問題になり、その先の引き締めを見越して、リスク資産の値崩れが起きるかもしれない。それは、「持続可能な」雇用最大化の任務達成の可能性を 大きく損なう。さらに厄介なことは、そうした事態が起きたときに有効な金融緩和の手段が見当たらないことである。
需要は強いが、労働生産性の伸び 率も回復して、穏当だが着実な雇用拡大があり、インフレも眼前の脅威とはならない中で、株価が上昇し、 家計は雇用拡大と資産価値の増加で成長の好循環が見えてくるのが、イエレン議長にとっての勝利である。雇用への需要拡大が爆発し、短期失業率が低下して賃 金が上昇し、後手に回った(Behind the Curve)という批判が激昂する中で、悠長な正常化を撤回させられることは、イエレン議長にとっての敗北である。
どちらに振れるのか。雇用統計ごとに緊張を強いられることになるが、両方の可能性を見ておく必要がありそうだ。
*鈴木敏之氏は、三菱東京UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチのシニアマーケットエコノミスト。1979年、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。バブル崩壊前夜より市場・経済分析に従事。英米駐在通算13年を経て、2012年より現職。