昔から踏切がある街に住みたかった。
今住んでる街には踏切がある。

向こう側とこちら側。

踏切に向こう側にはまた別の世界が広がってるんだと
思ってた。
一時的ではあるが遮断される世界。

それを見るのが好きだった。
単純に物珍しさというのもある。

僕の生まれ育った街には踏切がない。

それは別に特別なことじゃなく、
むしろ踏切があることが特別だった。

少なくとも僕にとっては。

憧れていたものを手に入れてしまう喪失感。


今の僕の足かせは家族。

母が死んで以来
ことあるごとに親父が家族を集めようとする。
それは多いに結構だが
こちらの都合もおかまいなしだ。

何かにつけて僕らの時間を拘束しようとする。

寂しさの代償とはこれほどまでに大きいのか。

僕は母が死んで悲しくなかったわけじゃない。
むしろ何かしていないと悲しくてダメになりそうだった。

いいタイミングで仕事があった。
無心で打ち込める仕事。
前に進むしかないと思い知らされた。

だから今、僕は仕事に打ち込みたい。
邪魔をしてほしくない。

僕の人生だ。

親父には感謝してるし
助けてあげたいと思う。

でも今、僕親父を助けることよりも
仕事をしたい。

それは母のためだ。
というと格好がつくが
要するに母に自慢したいのだ。

あなたが育てたボンクラ息子は
今、仕事で成功しているよ、と。

もう心配いらないよ、と。

これは誰にも言ってない僕の本心。


母は常日頃僕ぉ心配していた。
お金はあるか?借金はしてないか?
ちゃんと生活できているか?

要は子離れができていないのだ。
子離れ、というと過保護に聞こえるかもしれないが
母にとって僕はいつまでも
『おちゃらけた少年』なのだ。

30になろうとも40になろうとも
そう思っていただろう。

だからなおさら
もう心配いらない、僕はなんとかやっていけてる、というのを
見せてやりたい。


このやり方は母は嫌いかもしれない。
でも今、僕にはこの方法しか思いつかない。

自分で考えた答えには母は昔から寛大だった。

『あなたが考えたならいい』という態度だ。

僕は今、がんばりたい。
仕事も生活も。