会社員のM氏は自他ともに

認める短気な性格です。

そのため、

出張で地方のローカル線を利用する際には、

待ち時間が長くなるたびに、

強い苛立ちを感じていました。

ある夏の日の出張で、

乗り継ぎの電車を三十分以上待たされて、

イライラしながら電車に乗りました。

ずい分待たされたなと

不平不満を抱きつつ、

スーツの上着を網棚の上に載せました。

いつもM氏は鞄と上着を一緒に乗せますが、

この日は違いました。

下車後、

出張先の会場に向かう途中、

M氏は上着を電車内に

忘れたことに気づきました。

駅に戻って駅員に申し出ると、

折り返しの電車で届けてくれることになったのです。

M氏は駅員と車掌の素早い対応により、

スムーズに上着が手元に戻って来たことで、

待ち時間を嫌悪していた自分を

反省しました。

それ以来、

M氏は電車の待ち時間のたびに、

このローカル線での出来事を

感慨深く思い起こすそうです。