$鬼瓦権蔵の心の叫び 言葉遊び 道徳


スノーホワイト



過去作とビジュアルに大差がない?

確かに傑作『指輪物語』を

連想させる部分等は多々あった。

けど『指輪~』以降、

似たような映像表現の作品はワラワラあった訳で、

今になって比較されて評価を

落とされるのはなんか不遇な気がする。

物語を詰め込み過ぎ?

確かに。

終盤、

主人公が戦いを決意する動機は不明瞭。

ハンツマンとウィリアムの関係や

決着ももっと描いて欲しかった気がするし、

その他の人物描写も薄味。

だが本作、

エンタメに徹しつつも

映像美を感じる部分は多く、

開幕から終幕まで、

白・黒・赤・金が映える映像は見事だ。

そして独自性を感じさせる設定も多い。

ずるりと溶けるブロンズの鏡。

メッセンジャーとして現れる白黒のカラス。

樹木と殆ど一体化したトロール。

怪物と化す黒い硝子。

タールの如く粘るラヴェンナのマント。

特に面白いのは、

人の不安を糧にする

黒い森の短くも濃密なビジュアル。

そして、

スノー・ホワイトを救い主として

受け入れる森の動植物たちだ。

小動物も草木も、

幻想的でありながら十分な

現実味も感じさせ、

美しさの中に1割程度の

グロテスクが加味されたような絶妙なデザイン。

そして、主役2人の魅力。

氷のように冷たく美しい女王ラヴェンナ。

若さを保つ為、

若い娘の血で満たした風呂に浸かったという

実在の殺人者

エリザベート・バートリを連想した。

さすがに血の風呂は登場しなかったが、

石膏のような液体からせり上がる

彼女は無機質で不気味。

一方で、

常に“美”に追い回されているような

焦燥と恐怖の表情が憐れだった。

ラヴェンナが

『美しくなければ世界に棄てられる』

という強迫観念に駆られていたのに対し、

スノー・ホワイトは生き延びる為には

汚泥や血に塗れる事にも躊躇しない、

いわば生命の美とでも

呼べそうな美しさを有している。

森の生き物が彼女を

受け入れたのも、

彼女が

彼等と同じ生への

渇望に満ちていたからかも、

なんてね。

僕は作品が

『物語に重きを置いてない』

と感じたら

物語の整合性とかは割と

アッサリ無視して観られる人間でして、

むしろ『この内容を2時間足らずで

そつなくまとめたなあ』と感じた位だ。

個人的には贅沢なビジュアルと、

異なる“美”の

対決を最後まで楽しめた訳で。