東京に住むTさんは、

<故郷の母に少しだけでも

親孝行がしたい>という思いで、

東京見物を実行しました。

母親は身体が不自由で、

車椅子での生活です。

地方から車椅子で

上京した母の願いは、

観光名所の浅草寺へ行くことでした。

「混雑していて大変だ」

と言いたいTさんでしたが、

周辺だけでも見学させようと

浅草へ出かけました。

予想通りの人込みのため、

「本堂ヘ行きたい」と言う母に、

Tさんは「無理だよ」と答えました。

すると母は寂しい顔をしたのです。

その顔を見ていたTさんの頭に、

石川啄木の歌が過りました。

「たわむれに母を背負ひ((い))て

そのあまり 軽きに泣きて 

三歩あゆまず」の一首です。

Tさんは思い切って母親を背負い、

仲見世通りを進みました。

その時、

母親のあまりの軽さに

なんて軽いのだろう。

こんなに軽くなるまで

苦労をかけたのだな・・・と、

自らが母親にかけてきた苦労を、

一瞬にして知らされたのでした。

今日、私たちがこうして

仕事ができるのは、

両親をはじめとする

周囲の人たちのお陰です。

それに応えるためにも、

日々、

良い仕事をしていきたいものです。