混雑している乗り物の中で、

雨に濡れた傘の扱いには困るものです。

長傘を手に持っていると、

周りの人の服を濡らしかねず、

折りたたみ傘を鞄にしまうと、

鞄の中の書類や用具が濡れてしまうおそれもあります。

ある雨の日、

Cさんはビニール袋に折りたたみ傘をしまい、

電車の座席に座りました。

その際、

向かい側の席に座ろうとしていた

女性に目がいきました。

女性は、

濡れた折りたたみ傘をサッとたたむと、

丈夫そうなカバーに素早く入れました。

その後、

バッグの中からタオルを取り出し、

両隣の男性の鞄についた雨の雫をサッと拭き取り、

「失礼しました」

と笑顔で会釈をしたのです。

一連の動作のスムーズさにCさんは感心し、

爽やかな気持ちになりました。

周りの人にまで気配りのできる女性の行動に、

自分の傘で自分だけが

濡れないようにと注意していたことを

恥ずかしく思いました。

そして日頃、

仕事の忙しさを理由に、

同僚や家族に対しても気配りに

欠けていた自分を思い返したのです。