江戸前期の元禄元年、

町人の富をテーマにした浮世草子

『日本永代蔵』がベストセラーとなりました。

作者は井原西鶴で、六巻三十話からなります。

「人間とて死んでしまえば一片の煙。

そうなってしまえば金銀は瓦石と同じ」

とする一方で、

「人にとって金銀にまさる宝があるはずがない」

と語るなど、

人間の持つ二面性を興味深く描いています。

当時の経済事情にからむ人間模様と、

西鶴の庶民に対する深い洞察は、

現代にも通じるところがあるようです。

金銭に執着するのが人間の性であると

言ってしまえばそれまでですが、

金銭本来の役割は何かを忘れてはならないでしょう。

私たち社会人にとって、

金銭を得ることは日常生活の基本です。

金銭を得るために働くことは当然ですが、

あまりに執着心が強いと自らの身を滅ぼします。

金銭の意義とは、

それ自体の獲得が目的ではなく、

あくまで生活の中で活かすことにあります。

西鶴が追い求めた揺れ動く人間の性には、

今も昔も変わらぬ真実があるのかもしれません。