ヘルプ 心がつなぐストーリー
白人で作家の卵のスキーター、
それに黒人メイドのエイビリーとミニーの3人によって、
“ヘルプ”と呼ばれる黒人メイドたちが置かれ
た劣悪な環境と、
それに耐える彼女たちの心の声が描かれる。
3人とも主演、
助演どちらともとれる構成になっている。
60年代のアメリカ南部が舞台で、
セット、
衣装、
車のどれをとっても、
子供の頃に憧れた大国の雰囲気がよく出た作品だ。
“Jackson”という軽快な歌に乗り、
大学を卒業してミシシッピに帰ってきた
スキーターが面接のため“Jackson”
という地元新聞社のオフィスに
吸い込まれていくところから始まる。
黒人メイドを雇うことがステイタスで、
しかもメイドを人とも思わず
奴隷のように扱う地域。
それが当たり前のこととしか見ることが
できない人間が多いなか、
当たり前と見ることのおかしさに
気づく人間たちもいる。
その代表がスキーターだ。
共用は不潔だからと、
トイレまで別にしようと躍起だつ若い婦人会。
リーダーのヒリーの目がひきつってコワいぐらいだ。
同じ上流階級の夫人ながら、
その派手なファッションや
鈍臭さで婦人会のメンバーから疎まれるシーリアが、
慣習にとらわれない優しさでメイドに接する姿にホッとする。
婦人会の面々が、
親として子にロクにトイレの躾けもできないのに、
メイドたちはトイレどころか、
白人の子供たちに物事の考え方を諭し、
生きる道筋さえ説く。
そんな彼女らを家族として
温かく接することのできない人間が、
大層にチャリティー・パーティーを開くのだから、
その思考は理解し難いものがある。
ただ、
この作品は人種問題を政治的または
歴史的な見地で語ったりはしない。
白人家庭と、
そこに雇われた黒人メイドの処遇を
端的に表現するに留まっている。
そこが却って、
話の構図が分かりやすく善悪が明確で、
感情的に同意できる人物も見つけやすい。
テーマは硬いが、
随所に笑いを散りばめ、
明るいタッチで一級の娯楽作に仕上げたのがいい。