戦火の馬
製作、
撮影、
編集、
音楽はスピルバーグ作品でお馴染みの面々。
息が合ってるというよりも、
今の映画界でこれ以上の画を
望むべくもない最高のスタッフである。
上空から望む、
森から農場へと移るオープニング・ショットを
観ただけでやられたという思い。
こんなゆったりとした美しい映像と
音楽で引き込んでくれる映画は、
最近では珍しい。
ひょんなことで飼うことになった馬・ジョーイと
少年アルバートとの交流から、
戦火の中、
次々と持ち主が変わる数奇な
運命を辿る物語は、
時に叙情的に、
時として残酷に語られていく。
とくに戦馬として共に生きることになる黒馬・
トップソーンとの二頭による強調と信頼は、
人の友情にも勝る心の交流を爪弾き、
ジョーイの生きる力と希望が画面にみなぎり、
その姿は荘厳でさえある。
視覚効果の使い手スピルバーグが、
極力、
画像処理を使わずに創り上げた映像は、
馬と人、
人と人の繋がりを通して、
平和の尊さと運命の絆を謳い上げる。
それぞれの逸話がよく、
とくに危険を承知でジョーイを助ける
勇気ある兵士の行動は、
戦争の無意味さを訴える逸話として心温まる。
名作「風と共に去りぬ」
ほどの壮大さはないが、
それに近い色合いを持った
素晴らしい作品に仕上がった。
アルバートの父親テッドが捨て去ろうとした
“誇り”も帰ってくるラストシーンに、
この作品の本筋を見る。
アルバートの母親ローズを
演じたエミリー・ワトソンの存在感も
注目だアルバートの母親ローズを
演じたエミリー・ワトソンの存在感も注目だ。
夫に対して放つ
「どんどん憎くなるけど、
それ以上に愛してる」は
泣けるセリフだ。