K主任の下に新人の

Nさんが配属されました。

しかし、

K主任がていねいに業務を

教えようとしても、

Nさんは素直に聞き入れません。

指示をしてもすぐに「ハイ」と

受けないだけでなく、

納得できない時には逆に

食ってかかるのです。

K主任は<どうしてこんなヤツを

採用したのだろう。それも、

よりによって私の部下につけるなんてと、

苛立ちを隠せませんでした。

思い余って、

上司に相談をすると、

中国の墨子の故事を話し始めたのです。

「中国に

『良弓は張り難し』

という言葉がある。

強くて良い弓は弦を

引きしぼるのが難しいが、

うまく使いこなせば矢が遠くまで飛び、

深く突きささる」と言い、

声を強めて続けました。

「多くの志願者の中から

N君が採用されたのは、

我が社を伸ばすのに

相応しい人物だと見込んだからだ。

そしてN君を伸ばす力があるのは、

君しかいないと託されたのだよ。

N君をみごとに育て上げて、

二人そろって大きく伸びてはどうか」

K主任は、

自分に託された思いをかみ締め、

素直に働き抜こうと決めたのです。