$鬼瓦権蔵の心の叫び 言葉遊び


大鹿村騒動記


女房に逃げられたことも、

その女房が帰ってきたことも

筒抜けの小さな山村。

ここにはプライベート

なんてものは存在しない。

女房を連れ出した

男を呪ってはみたものの、

その男が村に戻ってくれば、

なんだかんだいっても

受け入れてしまう。

ここでの人を量る基準は

『村の人間かそうでないか』が

いちばんなのだ。

なにはともあれ、

住人が助け合っていかないと

村は成り立たない。

人の女房を連れ出した

バツの悪さがあっても、

久しぶりの故郷に溶け込む

お調子者の治(岸部一徳)、

女房を寝取られても

昔のように治に接してしまう善(原田芳雄)、

ふたりの掛け合いは

漫才のようにおもしろい。

駅ができるはずもない

リニアの建設に賛成する権三(石橋蓮司)が

実は土木業者で、

反対する者と一緒になんか

歌舞伎はできないと

練習を拒んだりするくだりも、

子供っぽい可笑しさとともに、

村ののどかさを醸し出す。

喧嘩しても逃げ場のない村、

顔を合わせないわけにはいかない

小さな村。

年に一回、

300年以上続けてきた村の

大イベント・歌舞伎はギクシャクした

人間関係をも呑み込んでくれる

村の浄化剤のようだ。

歌舞伎の本番、

舞台の袖で善の妻・貴子(大楠道代)が

舞台に立つ善に向かって呟く

「許してもらわなくてもいいから」、

それに続く原田芳雄のクローズアップは、

このふたりだけが共有しうる情愛が滲み出る。

三國連太郎がシベリア抑留時の

話をする場面は、

間の取り方といいアドリブといい、

ほんとに巧い。

抑留中、

同郷の友を失った老人の経験は、

そのまま村の歴史を物語る。

原田芳雄さん、

70年代前半、

浅丘ルリ子さんと共演した

TVドラマ「冬物語」での

煙草を吸うあなたは渋くてカッコよくて、

“大人の男”

として憧れでした。

ご冥福をお祈りします。


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