

最後の忠臣蔵
共に討ち入り、
共に死すはずの赤穂の義士から
外れてしまった二人の武士が
歩んだ16年の歳月の重みがよく出ている。
とくに、
その重みを知る吉右衛門が孫左衛門の使命を知り、
裏切者と謗りを受け続けてきた
孫左の労をねぎらうシーンは泣ける。
佐藤浩市が巧い。
役所広司は、人を束ねる「十三人の刺客」よりも、
今作のように護るべき人がいるような役のほうが似合う。
小道具や光の具合に気が配られた屋内、
竹の緑や紅い葉など四季を彩るロケーションも綺麗だ。
横幅が小さいビスタ・サイズながら、
実直で無駄のないカメラによって充分な
情報量を引き出す。
また、義に生きる武家と業に生きる
町家の対比がよく描かれ、
武士の生き様をラストに据えた構成が、
この作品のテーマを引き立たせる。
ただ、
人形浄瑠璃の「曾根崎心中」を
挿入した意図がよく解らなかった。
それに、挿入回数がややしつこい。
共に死すと約束した孫左衛門と
吉右衛門の間柄を指したのか、
それとも孫左衛門と可音ふたりの
情愛を指したものか?
孫左は武士の道を全うし、
可音は内蔵助の血筋を残す役目を背負う。
両者、個として生きることを自ら閉ざす。
ある意味、
“心中”
と言えなくもないが・・・。
可音が嫁ぐとき、
孫左衛門が声に出さずに口だけで最後の
言葉を可音に掛ける。
それは「幸せにおなりください」ではなく
「幸せにおなりなさい」に見える。
家臣ではなく、父としての餞(はなむけ)に違いない。
今年観た時代劇、
SF「ちょんまげぷりん」は別格として、
「必死剣 鳥刺し」「十三人の刺客」「大奥」
「桜田門外ノ変」「武士の家計簿」
「最後の忠臣蔵」のなかで、
今作が一番の出来。



































