

シャッターアイランド
クラシカルなオープニングタイトル、
それにマッチした仰々しい音楽、
鈍く光る鉄のような色調の映像……。
雰囲気たっぷりの幕開きは快調。
ゴシックホラーかと思わせるような演出や、
“赤狩り”の不穏な影が見え隠れする展開、
中盤の悪夢のシーンも良い。
特に悪夢のシーンは、
舞い散る雪や舞い散る灰、
逆流する煙やカットごとに微妙に変化する背景など、
脳ミソを掻き回されるような感覚を味わう見事な出来映え。
また、随所に「今のは見間違いか?」
と違和感を覚えさせるカットを挟み込ませたのも、
得体の知れない不気味さや不安感を煽るのに一役買っている。
だが何故だろう、
いまいち映画にのめり込めないこの感じは。
事件の謎の正体が不満だった訳じゃない。
物語の真相は、
ミステリー好きな人なら割と容易に予測できるものだろう。
だが映画を観た人なら分かるように、
これはドンデン返しを楽しむタイプの作品じゃあない。
だいたい『シックスセンス』
の柳の下のドジョウを狙ったような
大袈裟な宣伝はハナから信用していなかったので、
その辺は別に気にならなかった。
不満点は他にある。
観客を混乱させようと色々な要素を盛り込みすぎて、
かえって映画が冗長になってしまったように思えた点もひとつ。
だが一番の理由は、
主人公が事件に執着する原因となった女性の
“ある行為”の要因がやや短絡的すぎるように
思える点かもしれない。
彼女はきっととてつもない大きさの
苦しみや悲しみを抱えていたに違いないのに、
その辺りの描き方が雑に思えるのだ。
だから、
主人公が女性に対して取った行動も今一つ心に響かない
もっともディカプリオの迫真の演技で補われてはいるが。
頭では「面白い話」「悲しい話」と認識しているのに、
それが心にまで沁みてこない。
不満の理由を一言で言えばそんな所。
全然説明になってませんね、すみません
だがラストの台詞は良い。
あの人物は本当は“真相”を理解していたのかもしれない……
まるで主人公らが燻らせる煙草の煙のように、
儚く寂しい余韻を残す最後だった。
僕の肌には合わなかったが、
断じて悪い映画じゃない。ハマる人なら、
きっとハマる。
ミステリアスな雰囲気を味わいたい人は、
是非。














