ゼロの焦点
『ヴィヨンの妻』で見事な表情を
見せた広末涼子だが、
本作での演技は一本調子でイマイチ。
華はある女優さんだが、
主演を務めるには……ウーム。
説明過多なナレーションも耳につき、
彼女が1人で映画を
引っ張る序盤はどうも気持ちが乗り切らない。
だが中谷美紀が登場した途端、
映画全体がグッと引き締まる。
役柄が乗り移ったかのような
凄まじい演技は必見。
木村多江も他2人より短い出番ながら
、最後の最後で見せ場を
かっさらう見事な『泣き笑い』で魅せる。
「もはや戦後では無い」と
声高にうたわれた高度成長期の日本。
希望に満ちた新たな時代を
生きたいと願いつつも、
戦争の影に苛まれ続けた人々の物語。
時代に翻弄された女達の
末路が描かれる終盤の展開に泣いた。
だが、未だに戦争の影を
引き摺っていただろう
この時代全体の悲しみまでは
描ききれなかった感がある。
戦後の描写はあっても
戦時中の描写が皆無なのだから。
例えば事件の軸である鵜原憲一の場合、
従軍経験が彼の性格に影を
落としているのは明らかだが、
その過去は描かれない。
そのため彼が取る行動の動機も弱く感じられた。
タイトル『ゼロの焦点』の
意味は僕には掴めず終い。
この機会に原作も読んでみようかな。






YYC








