引き出しの中のラブレター
伝えたいのに伝わらない“言葉”。
伝えたかったのに、
伝えられないままの“言葉”。
そんな心の奥にしまったままの
“言葉”を伝えていく本作。
ツッコミたいところはイッパイあるのですが、
まあイイお話です。
え~とね、オムニバス形式の映画です。
色々な人物が登場し、
様々な物語が展開されます。
キャストも常盤貴子、林 遣都、豊原功補、
中島知子、岩尾 望、本上まなみ、
片岡鶴太郎、伊東四朗、そして八千草薫に
仲代達矢と多士済々。
前半はそれら幾つかのエピソードが、
ほぼブツ切りで展開していくので、
何か見ていて“ピン”ときませんでした。
『コレ、どこでどうしたいねんな?
ようワカランな~。
何でこんなにブチブチ切れるんや?』って感じで、
正直乗り切れませんでした。
しかし後半、作中で『「引き出しの中のラブレター」
というラジオ番組を作る』というあたりから、
少しずつ映画全体が繋がり始め、
この映画の大きなテーマ“伝える”ということが、
徐々にクローズアップされてきます。
ここらへんからの演出は、
なかなか上手いな~と思いました。
個々のエピソードは、
一言で言ってしまうと非常にベタで健全なお話ばかり。
函館の高校生は、
今時珍しいほどスレていなくて、
家族思い。
シングルマザーになることを決意した女は、
何かと世話を焼く母を疎ましく思いつつも、
ここぞという時にはやはり頼ってしまう。
長崎から単身赴任で上京したタクシードライバーは、
道が憶えられない上にナビも使えず、
家族を思いながらも悪戦苦闘の日々。
これら、まったく繋がりのなさそうな話が、
ラストでは繋がっちゃうのです。
相当無茶なフリをしてますが、
かなり強引にまとめ上げられた
気もしないではないですし、
現に『このエピソードは、
なくてもイイんちゃうのん?』
と思ったものもありますが、
意外や意外その話で一番泣かされちゃったり
もしました(>_<)。うん、
素朴にイイ話だったと思います。
この映画では、ラジオの存在が非常に
重要な位置を占めています。伝えられない想い、
言葉を電波に乗せて届ける。
ネット全盛のこの時代に、
少々アナログではありますが、
“言葉の力”を最もダイレクトに
伝えることができるメディア…
それがラジオだと吾輩は思います。
そしてこの映画では、その“言葉の力”が、
とても優しくスクリーンに映し出されています。
『みんな誰かに想われて、そして誰かを想っている…』
日々忙しく生きている我々が、
つい忘れがちになる“想い”
をこの映画は思い出させてくれます。
主演の常盤貴子さんの演技もよかったですが、
この映画で特筆すべきは仲代達矢と
八千草薫の大御所お2人の存在でしょう。
もお、出てくるだけで存在感が違います。
ともすれば軽くなりがちな映画を、
イイ意味で締めています。
このお2人の共演(
実際作中では絡んでおられませんが)を見るだけでも、
この映画は一見の価値があると思います。
で、どうしてもツッコミたいところがありまして…、
函館の高校生が昼間に普通のラジオで、
東京のFM(J-WAVE)を受信するのは不可能です!
もし普通に受信出来たのなら、
それは番組がネットされているのであって、
彼らが聞いているのは北海道のFM局・FM NORTH WAVEの電波でしょう。
常盤貴子演じる真生は作中
『え?北海道でJ-WAVEが聞けるの?』てなことを、
番組中で喋ってますが、自分の番組が
どこまでネットされて流れてるかぐらい、
把握しときなさい!せっかくJFLってものがあるんだから、
その辺もっと上手く使わないと



