$鬼瓦権蔵の心の叫び 言葉遊び
路上のソリスト

ホームレスの

天才チェリストにジェイミー・フォックス、

それを取材する記者に

ロバート・ダウニー・Jr.

この映画はもうこの二人につきます。

新聞のコラムに感動した読者から

プレゼントされたチェロに

目を輝かせて

すぐにも弾いてみたくて

車がひっきりなしにと

おりすぎるトンネルで

30年ぶりにチェロに

触れるナサニエル。

ふたりきりのコンサートの

シーンが印象的でした。

Rayで盲目のピアニスト、

レイ・チャールズを演じたときの

ジェイミー・フォックスもすごかったですが、

ナサニエルを演じられるのは彼以外にない!

とだれもが確信するような、

鬼気迫る演技でした。

そもそも二人の出会いは、

弦が2本しかないバイオリンを

弾いているホームレスが

名門ジュリアード出身

ということを偶然知ったロペスが

このギャップはコラムのネタになる

と興味をもったことから

始まるのですが、

ナサニエルと深くかかわるうちに

彼をこのまま「掃きだめ」に

捨てておいてよいものか悩み、

仕事上のかかわりを越えて、

あれこれ奔走して尽くします。

でも良かれと思ってしたことで、

逆にナサニエルに

敵意をもたれてしまい、

ロペスは傷つき、苦しみます。

というのも、ナサニエルには

「統合失調症」があり、

自分をおさえきれなくなったり

突然凶暴になったり・・

ジュリアードを辞めた

原因もそれでした。

ナサニエル自身もまた

苦しみのなかにいるのです。

ロスにいる9万人もの

路上生活者の実態。

ランプコミュニティなどの支援施設での

ボランティアたちの活動。

ドラッグが蔓延し、

治安も衛生状態も劣悪な

彼らの生活空間・・・・

そういったアメリカのかかえる問題も

描きつつ・・・なので、

この映画、決して

気分爽快になれるような

娯楽映画にはなっていません。

Rayでも、

ドラッグ依存から立ち直るための

苦悩が描かれていましたが、

それ以上にいろんな

苦しみに胸がつぶれそうになります。

ロペス自身の妻との関係、

94年のノースリッジ地震で失ったもの・・

まで登場して、もう、

苦しみのオンパレードです。

だから、カンドーして、

気持ちよく泣いて、

すっきりして帰りたい、

たとえば「奇跡のシンフォニー」

とかがお好みの方には

この映画お勧めできないです。

苦しいこと、

見たくないこと、

報われないこと・・・

イヤなことは数あれど、

音楽に陶酔しているときの

ナサニエルに「神の愛」を感じ、

ともに神の恩寵を喜べるのだったら、

日々のイヤなことなんて、

その瞬間は吹き飛んでしまいます

もしこれが「ドキュメンタリー」だったら、

ロスの路上生活者や精神を

病んだ人達の実態や政策の問題点など、

問題を提起しながら、

ある程度結論をだすのでしょうが、

そうでないところが、

「私は」好きなので満点です。
ペタしてねペタしてねペタしてねペタしてね