ココ・アヴァン・シャネル
今作を観て思ったのは、
シャネルの原点がいかに創造されたか、
よりも、子供時代の痛烈な体験が後々まで
影響することだった。
原題・シャネルになる前のココ。
ココというのは彼女の愛称で、
本名はガブリエル。
母親の死後、父親に見捨てられ、
姉と共に孤児院で
育つ。お針子をしながらキャバレーで
歌手を夢見る日々。
当時、女性が自立して仕事を
持つことなど考えられず、
貧乏女性が財を築くには、
富裕な男の玉の輿にのるか、
一生下働きでコツコツと貯めるか(
これは難しいもんね)
…というわけで、
ココはアッサリと将校の愛人になる
姉に比べると負けん気が強く、
口も悪いわ気も荒いわ、
そして当時のフリフリ
ファッションを毛嫌いするあたり、
私には母を裏切った父への
恨みがかなりなのだと感じた。
男(愛)を信じてバカな夢を見るよりも、
もっと現実を見て、
自立しなければならないと、
意気込みだけは相当なもの。
ただ理想だけでは夢は
成り立たず、アッサリと自ら
愛人になる道を選ぶ…
このあたりは時代ゆえに仕方ない
のもあるだろうが、
実は愛を探し求めてたのではないか。
自分の存在価値を認めてほしい。
子供時代に叶わなかった夢はそこに
起因する気がする。
わざと場違いなファッションを好むのも、
(才能とは別次元で)自意識から
生まれるように見える。
女らしさを否定することで、
自分は他の女とは違うのだ
と懸命に訴えているのだ。
華々しいファッション界からは
想像のつかない地味さである。
だがしかし…。
それが思わぬ旋風を起こすのが面白い。
鳥のような羽帽子から麦わら帽子へ。
機能性とシンプルを兼ね備えたデザインが、のちに
どんどん女性たちの間で広まり、
好評を博していく。
何が起こるか分からないのが人生、
ココ本人も自分の
個性がこれだけ評価されるとは
思わなかっただろう。
思惑とは別のところで成功を
おさめ始める彼女だが、
自分を認め、
愛してくれる男性に巡り逢えた経験こそが
本当は最も手に入れたかった
財産だっただろうと思う。
ついに日向の存在を
手に入れられなかった彼女だが、
決して不幸ではないと思う。
あんな人生、欲しくても
貰えるものではない。
しかも自身で選びとったのだから。
(野心に満ちた女性は、
白馬には自分が乗るんですねぇ)



