しているときは何をしていても

これはいいことなのだと思ってしている

あるいはちょっぴり

不安のかげを引きずりながらしている

またいましておかなければ

とても後悔すると思いながらしている

でも後になってそれは鮮明になるのだ

おおかたのことは

ひとつの布石さえしておけば

時の中に身をゆだねて

じいっとしている方が

いいことがやってくることが

そのような喜びとか

思いがけない運のようなのは

動かない方が向こうからやってくるものだかのだと

はすにかまえてちらっと考える

なのに自分は今日

木枯らし吹く秋の昼

心せきながら携帯電話をしている

しなければならない電話か

してはいけない電話かなどさえ思いもせず

人恋しさにまけて

飢えた乳飲み子が乳房にすがりつくように

携帯電話をしている