それは

生き造りの鯛

ぴいんと

いせい良く尾びれを上げ

祝いのテーブルの上で

悠然とありながら

その身は

切られ

切れれて

ぴくぴくと痛んでいる

人々は笑いさざめきながら

美しい手で

一切れ  ひときれ

それを口へと運んでいる

やがて

宴が終わるころ

すっかり身を削がれた鯛は

すべての痛みから

解放されて

ギラリと光る眼玉と

清々しい白い骨だけが

人々の関心外で

本当に鯛であることの孤独を

生きはじめる