美は醜へ

愛は憎悪へ

朝は夜へ

春は冬へ

信頼は不信へ

生は死へ

すべてのものは頼りなく

ぐらりと裏返される

干潟に打ち上げられた魚

裏返されたものの遠のいた後に

ひくひくと身を震わせながら

孤独な空を眺めている

愛した一瞬

信じた一瞬

生きた一瞬

美しいと思った一瞬

魚は腹を

かつて海の中で拾った

一瞬一瞬のまぼろしと

それを打ち消し去った

永遠のためにふくれてしまった

もう海へ戻ることはできない

魚の眼はあいたまま濁って行った