木の中にかくれていたもの

それは擦ると火になった

石の中にかくれているもの

それを擦ると火になった

見えないものはみんな

擦ると火になる

擦って火にならないものは嘘だ

ほんとうの固いものは

ぶつかれば火が出る

でも

みんな火傷をしないように

少ししか火花を散らさなかった

木は

なにくわぬ顔で

いつのまにかまた木の中に帰ってしまう

少ししか火にならなかった石

石の中にかえって

またむっつりと何かを考えている

冷めている知恵の裂け目に

燃えている火など

みんなお行儀がいい

間違っても火傷なんかしやしない

夏の大地に木と石の

小さな炎が氾濫(はんらん)する

けれどただ

ひたすらに暑かった

自分の太陽