【BEAST:ヒョンスン】今でも僕の欲しいもの
今日は午後から絶対に仕事を入れないでね?
絶対だからね!?
って、僕に念押ししなかったっけ?
別にいいんだけどさ。
今日は僕の誕生日。
僕だって何かして欲しかったわけじゃないけど、
午後からあけとけって言われたから、
皆に冷やかされても我慢して、
頑張って午前中で収録終わらせたのにさ。
肝心のカレンがいないってどういうこと?
本当は僕の誕生日だからって早退させるのもどうかと思ったけど、
カレンがどうしてもっていうから、
寄り道してテギョンを迎えにいったのに、
帰ってきたらメモが一枚。
どうしても外せない仕事で出てきます。
ヒョンスン、テギョン、ごめんね って。
別に?
大事にされてないとは思ってないけど、
初めての誕生日の時はあんなにいっぱい
プレゼントとか料理とか準備してくれてたのに、
さっきキッチンを覗いても
別に何も準備してなかったし、
冷蔵庫にケーキなんて入ってなかったし、
リビングにだってプレゼントは1つもなかった。
僕は優しいから、
毎年カレンの誕生日には今までどおり
プレゼントを贈ってるんだけどね。
「アッパァ?怒ってるの?
お顔が怖いよ?」
可愛いはずのテギョンの一言に
ちょっとムってしちゃって、
別にって一言だけ告げると、
去年カレンからもらったダンスシューズに足を突っ込んだ。
「アッパ!踊るの?ぼく見ててもいい?」
普段ダンスなんて全然興味持たないのにね。
異常な雰囲気をキャッチしたのかな。
クールなはずのテギョンが、必死で僕にかまってほしいって
オーラを出してくるからたまんない。
「テギョンもダンスが好きだったら、
良かったのにね」
こんな嫌味いっぱいな言葉なのに、
テギョンはそれでも僕をみて笑うんだ。
「………ごめん」
かがんでギュッと抱きしめてやると、
安心したのか「何であやまるの?」なんていいながら、
僕の首に抱きついてきた。
僕、バカだよね。
カレンだって仕方なく仕事にいっただけなのに。
「テギョン、僕のダンス好き?」
「うんっ!ぼく、アッパのダンスもお歌も好き!!
アッパはビーストのリードボーカルだもんね!!!!!!
ぼく、スムのダンスが見たい!」
ほらっ、気分が急に良くなった。
小さい天使だよね。
こうやって、僕の欲しい言葉簡単にくれるし。
リクエストどおり、スムのイントロが掛かっただけで、
この笑顔だし。
そんなに広くないけど、レッスン用の部屋、
音楽に合わせてダンスをしてたら、
鏡越しに膝を抱えてじっと僕を見てるテギョンと目があった。
出会ったときからキャリアウーマンだったカレン。
結婚して、テギョンが出来て、
ライターっていう職業だったからできたのかな?
在宅中心の仕事に切り替えて、
テギョンの子育ての経験を生かして、
育児雑誌にも記事を書いたりしていて。
カレンが言ってたことがある。
テギョンって、私が仕事してると
じーっと後ろで膝抱えて座って見てるの。
絶対邪魔してこないし、他のことして遊んでていいんだよ?
って言っても、絶対違う部屋には行こうとしないんだよ。
寂しい思いさせてるのかも。
こんな小さいのに、親に気を使ってるのかなぁって
今も寂しい?
「テギョン、レッスンおしまい。
遊ぶ?」
「いいよ、アッパはレッスンしてて。
ぼく、アッパのレッスン見てるの好きだから」
「でも、僕のどが渇いたんだよね
テギョン、お茶一緒に飲んでくれる?」
嬉しそうに僕を見るテギョン。
やっぱり寂しかったんだね。
リビングで膝に乗せてやると、
喋るわけでもなく、僕の胸に頭をくっつけてくつろいでる姿が、
かわいくて仕方ない。
いい子だよね。子供って宇宙人みたいで、
何考えてるか判らなくて、
得意かっていわれるとそうでもないけど、
カレンと僕の子ってだけで、
幸せを感じる。
………ハァ。
幸せ感じたばっかだったのに、
ほんっと、ありえないし。
「それ、どうしても今じゃないと駄目?」
ほら、テギョンが泣きそうじゃん。
何のために午前中集中したと思ってるんだろう……。
テレビ局のミスで、朝収録したテープの一部が、
急遽取り直しになったって連絡に、
ため息が出る。
カレンのこと言えないよね。
「テギョン、僕どうしても行かなきゃいけないんだ。
お留守番できる?それとも、幼稚園戻る?」
「お留守番がいい…」
唇をきゅっと噛んじゃったテギョン。
絶対わがまま言わないだよね。行かないでって。
本当は連れて行って欲しいってわかってるんだ。
でも、親の我侭かもしれないけど、事務所やレッスンならともかく、
色々な人が出入りをして、
ずっと傍に入れない場所にテギョンを連れて行くのは、
正直抵抗がある。
カレンだって、きっといい顔しないと思うし。
「1時間。インタビューの部分だけだから、
絶対1時間で帰ってくる。
あの時計の、13の数字が、14になるまでには帰ってくるから。
絶対外に出ちゃだめだよ?火も駄目だよ?
あー………やっぱり一緒にいく?」
4歳の子、一人おいてくなんて、やっぱりあり得ないよね。
車の中でマネヒョンと待たせて……って、それも危険だし。
こんな時いつもだったらメンバーの誰かが見ててくれるけど、
全員同時に撮りなおしっていうし。
「……ぼく、子供じゃないよ?
お留守番ぐらいできるから、アッパ、早くいってきて?」
酷い親でごめん。
手早くカレンに事情をメールで送信して、
振り返ると、行けなくなりそうだったから、
振り返らずに家を出た。
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アッパがお出かけをして、何の音もしないんだ。
「アッパァ?オンマァ?」
しーんってした部屋は怖くって、
居ないって判ってるのに呼んでみた。
やっぱり、何の音もしなくて、
しょーがないなら、アッパのレッスン室の扉をあけたんだ。
アッパには内緒ね?って、オンマが買ってくれた
ダンス用のおくつをはいて、椅子にのってさっきアッパがかけてた
スムを流して………。
「ぶれす!ぶれす!ぶれす」
ぼく、本当はダンスが好きなんだ。
アッパに内緒で、ぼくもレッスンしてるんだよ。
今日だって、オンマが絶対アッパが喜ぶから、
踊ろうねっていうから、こうやっていっぱい練習したんだ。
アッパさっき、
ぼくがダンス好きだったら良かったのにって
いったよね?
喜んでくれるかな?
アッパ、ぼくと一緒に踊ってくれるかな…?
一生懸命練習してね、
アッパが14になったら帰ってくるっていったのに、
アッパもオンマも全然帰ってこなくって、
でもぼく、もう赤ちゃんじゃないから泣かないんだ……。
アッパ、オンマ、早く帰って来て…。
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ヨソプが調子にのってペラペラ喋るから、
帰るの遅くなったし!
すごく遠回りだけど、全員いやな顔せず、
先に車は合宿所じゃなくて、僕のマンションに滑り込んでいた。
「俺もテギョンに会いたいな、
なんだろ、テギョン、俺の子な気がするんだよな」
「テギョンはドヤドヤしてないし………、
僕の子だし。ドゥジュンの子のわけないじゃん。
遠回りさせてごめん、おつかれ」
このままなだれ込まれたら、正直迷惑。
慌ててバンを飛び降り、エントランスに入ってエレベータのボタンを、
イライラしながら、何回もプッシュする。
「ヒョンスン!ごめん!!
どうしようー、テギョン大丈夫かな」
「カレン…」
「ねぇ…ごめんって、怒らないで?」
駐車場から走ってきたんだ?
顔真っ赤にして、息を切らして。
「あたしもどうしても無理って断ったんだけど、
泣きつかれちゃって。ほんっとごめん」
「…」
言いたい文句は一杯あったけど、
まずはテギョンの様子が気になるから、
エレベータがあいた瞬間、2人してドアの前まで駆け寄ってた。
「「ただいま、テギョン?」」
シンクロした言葉に、顔を見合わせ、
リビングからテギョンが飛び出してくるのを期待したのに、
あれ…?
慌ててリビングや子供部屋、寝室を見たけどいないんだ。
外には出るなって言ったのにって、
一瞬あせったんだけど、
ふとかすかに聞こえる音に、
カレンがそっとレッスン部屋の扉をあけてを指さした。
「あいきゃんていくまい ぶれすぶれすぶれす」
テギョンが歌ってる?って思って覗いて、
正直鳥肌がたった。
いつのまに覚えたの?
全然むちゃくちゃだけど、むちゃくちゃだけど………、
ちっちゃい体で、BEASTのスムを踊ってる。
……だからさっきスムがいいってリクエストしたんだ?
「すごいでしょ?テギョンね、恥ずかしくって言えないみたいだけど、
ヒョンスンのダンスが凄く好きで、お誕生日プレゼントに、
ヒョンスンと一緒に踊りたいって。
あっ!こっから可愛いから見てて!!!!!」
パートなんて関係なく歌って踊ってたのに、
急にぴたっ歌うのを辞めたと思ったら、
『Breath in Breath Out』
「ゆんどぅーどぅん」
『Breath in Breath Out』
「ちゃんひょんすーん」
『Breath in Breath Out』
「ちゃんてーぎょん」
『Breath in Breath Out』
「そーびーすとぅ!」
あはっ。コールしちゃうんだ。
しかも、ジュニョンの部分がテギョンになってるし。
「こんな嬉しい誕生日プレゼント、
僕貰ったのはじめてかも」
思わずぽそっと飛び出た言葉に、
母親に戻る前にちょっとだけって、
カレンが腰に抱きついてくる。
カレン?やきもち?
こういうところが可愛いよね。
ぎゅっと抱きしめ返して、
じーっと見つめたら、
ほら、またドキドキしてる。
カレンってホンと僕の事好きだよね。
ま、僕もなんだけど。
「テギョン、ただいま」
「………!!!!!!!!!!
アッパ!!!オンマ!!おかえり
……見てたの?」
見られたくなかったって顔するからさ、
ま、嘘ぐらいついてあげるよ。
「何を?今帰ってきたばっかだよ。
テギョン何してたの?」
モジモジと下を向いて。
可愛すぎない?
カレンの後ろに隠れて、
やっと顔を出して、それでも僕の顔をじっとみて、
一生懸命話しかけてくるんだもん。
たまんない。
「あ、あのね。アッパ。
センイルチュッカヘ。
ぼくね、アッパにダンスのプレゼントしたくてね、
いっぱい練習したの」
「テギョンがダンス?
テギョンダンス好きだったんだ?
カレンどうしよう、僕凄く嬉しいかも」
カレンが僕とテギョンのやり取りをみて、
すごく幸せそうに笑うんだ。
初めての誕生日の時も思ったけど、
今でもやっぱりそう。
僕にはカレンの……そしてテギョンの笑顔が
プレゼントかもしれない。
お金払ったって買えないでしょ?
僕の愛しい人たちの笑顔って。
それにしても思い出した。
カレンは僕に何もプレゼントはないわけ?
やっぱり愛情減ってない?
「あっ、アッパ。また怒ったの?
ぼくのダンスが嫌?」
「違うよ。テギョンに怒ってないよ。
ねぇ、カレンからのプレゼントは??」
一瞬困った顔を見せたあと、
凄く僕の大好きな笑顔をむけて、
カレンは、ひょいっとテギョンを抱き上げ、
僕に向かって差し出した。
「………」
「駄目?」
「駄目じゃない。カレンが僕にくれた、
一番嬉しいプレゼントだし」
「………?ぼくがプレゼント???」
キョトンとしたテギョンを受け取って、
テギョンごとカレンを抱き寄せた。
カレンと出会ってから
僕は誕生日が好きになった。
今年も最高の誕生日。
今でも僕が一番欲しいのは、
カレンと、テギョンだけ。
だから、きっと永遠に、
僕の誕生日は最高のままだと思う。
9月3日です。
ひょんすん、せんいるちゅっかへーーーーー!!
先日おくまとカフェで立ち話をしてたんです。
そのなかでねー。
ひょんすんの子だったら、
よそぷの子だったら、
じゅにょの子だったらで、もりあがったっす。
結果、ドンウナがあっぱだとすてきだった←
