いつも通りの帰り道。終電2つ前。
帰りはゆっくり座れていい。いい加減に聞き飽きているJanisで外の音を遮り目を閉じる。
・・・。いつの間にか浅い眠りに入ってしまい、騒がしい気配を感じて目を開ける。車内は赤ら顔のサラリーマンと疲れた学生などでごった返す。渋谷。いつもの風景。
また浅い眠り。
電車が止まる振動。慌ててホームの駅名を探す。
まだ5駅もある。が、目を閉じるのは危険だなと思い、携帯を取り出す。
立っている乗客はまばらになっていた。
向かいの座席。斜め右から視線を感じる。
背が高く、髪の長い女性の顔がこちらに向いている気配。
私の両隣にも人はいる。取りあえず携帯に目を落とす。
次の駅。正面に目をやると、また同様の影。
やむを得ない。視線を合わせる。
思いがけなかったのか、視線が合ったことに慌てて目をそらしている。
オトコ?
化粧。スカート。網タイツにヒール。
ただ、男勝りの体格。肩幅。網タイツの下には筋肉質なふくらはぎ。
顔?男っぽい。ただし、体格が女性であれば、女性でも違和感はない。
そんなに珍しい話ではない。
たまたま目があっただけ。
・・・。
自宅最寄り駅。
私が席を立つのを確認した後に、例の女性も腰を上げる。
汗ばんだ。
漠然とイヤな感覚。
0時40分。自宅までは徒歩10分。