改札の外は小雨。

背後に重い影を引きずりながら、いつもより早足で改札を抜ける。



週明けということもあり、終電間際の乗客は少ない。

家まで10分。暗く静かな並木道。今日は途方も無い距離に感じる。



駅を出て5分。相変わらず、背後に気配がある。ヒールの音。

淡い期待が薄れ、嫌な予感の濃度が高まる。

心当たり?

女装した屈強な男に追けられる心当たりは無い。



街灯で照らし出される小雨が、アスファルトの鈍い暗さと対照的に、異様に繊細に見える。

神経が敏感になり、視覚が研ぎ澄まされているのか、目に入るもの全てが超現実的に映る。



背後の気配は、一定の距離を保ったまま。



駅を出て街のメイン通りを真っ直ぐ。ここまでは、同じルートでも珍しくはない。

次の交差点。点滅信号を左に曲がれば自宅まで1分かからない。

交差点で曲がれば、同じルートの可能性は低い。



交差点に差し掛かる。

思わず小走りになってしまった。

背後の歩調も速くなる。一気に距離が縮まる。

半ば諦めた気持ちで振り返りながら、身構える。武道の心得が無いわけではない。





電車の中で目が合った女性(?)では無かった。

30代後半とみられる質素な感じの女性が、交差点を曲がらず真っ直ぐに小走りで過ぎ去って行った。



安堵感と共に、自分の小心ぶりに情けなくなる。





だが、例の女性(?)とは、後日再び遭遇することになる・・・。